高揚(exaltation)

☆高揚サイン
 イグザルテッド、イグザルテイション、exaltation(s)は賞揚という意味です。当ブログではexaltation を高揚と称するものとします。
 高揚となる天体を持つサインは以下の七つです

 

 サイン  天体   順序  東西南北
 うお   金星   12  東側
 おひつじ 太陽    1
 おうし   月    2

 かに   木星    4  北側

 おとめ  水星    6  西側

 やぎ   火星   10  南側

 

 上記の順序は、おひつじを1番目のサインすなわちASCサインとした場合のサイン(実はハウスでもある)の順序です。
 なお当ブログの読者には自明だと思いますが、1番目のサインを決めれば、その1番目以降の順序は常にサイン=ハウスです。ホロスコピック占星術の根本原理は、サイン-ハウス方式です。
 東側が誕生の四分円(象限、四分儀)、西側が没落の四分円、南側が火星のごとくバリバリ働く社会的な四分円、北側が一族郎党の四分円です。
 鉛を象徴し重くて沈む性質がある土星は没落のナチュラル表示天体です。その隣接サインで高揚となる水星(ヘルメース)は、冥界への旅路の案内人の側面をもつ神です。英語では、御迎え現象のことをpsychopomp と言うらしい。これはヘルメースの一つの呼び名です。

 

占星術の言語
 “西洋”占星術の言語は、歴史的にみて以下の5種があります。
 (コイネー)ギリシア語、中世ペルシア語、アラビア語ラテン語、英語。
 
 日本の占星術シーンでは日本語も必要です。しかし日本語以外は英語だけで十分です。学者でもない限り。中世ペルシア語のまとまった占星術文献は現存していないようなので、ギリシア語、アラビア語もしくはラテン語を英語に翻訳した本が、日本人である我々が利用すべき書籍ということになります。
 英語というのはワールドスタンダードとなった言語だけのことはあります。これで解説できない占星術の用語は原則ありません。インド占星術ですらほとんどの現代の文献は英語で著述されています。
 山本啓二教授はAl-Buriniのアラビア語教則本を日本語に翻訳しています。これは英語を介さないまれな例外です。ただ、この教則本だけで占星術はできません。
 占星術やるには英語でok。その熱意が言語能力を上回るなら英語が苦手でもok、字引きや検索ができるなら。英語の本の figures をみれば占星術はできます。当ブログがその見本? となるなら幸いです。

 

☆高揚サインの理屈付け
 本日のお題は、exaltation、高揚です。

 高揚を kingdom (王国)と表現することもあります。しかし、これはペルシア人またはアラビア人、さもなくば一人のラテントランスレーターの解釈であり、もとのギリシア語は、hupsoma、英語ならheight ? です。現代の日常の英語なら raised up、持ち上げというような意味です。つまりexaltation というのは相当にふさわしい言葉です。アラビア語の高揚を exaltation に相当するラテン語に訳したのがセビリアのジョンです。西洋占星術の用語の多くはジョンの翻訳が起源だとされています。有名なのはアングル。これはジョンの訳語らしい。
 セビリアのジョン(1133-1153に活躍)、ヨハネス・ヒスパレンシス、John of Seville。
 西洋占星術の用語の起源となった翻訳家をもう一人あげるなら Adelard of Bath、バースのアデラード(1080年頃-1152年頃)です。日本語のwikipediaに記事があります。

 高揚を kingdom と訳したのではわけがわかりませせん。ドミサイル(domicile、住まい)やロード(lord、領主)と意味が被ってしまいます。

 さて、この高揚です。
 各天体がどのサインで高揚となるか、かにサイン上昇の世界チャート(Thema Mundi)で理屈付けが可能です。これはクリス・ブレナンが解説しています。
 しかし世界チャートを持ち出さなくても理屈付けは可能です。かにASCが世界の始まりも一つの見識です。しかしレトリウスは、むしろこれに反対で、世界の始まりは、おひつじサインだと主張しています。世界を創造する光を放つ唯一の天体である太陽のrevolution的には一理あります。
 それに、これは秘伝的な知識なのですが、太陽はアスペクト的天体です。 Aspect の spe はスペクタクルのスぺで見るという意味で、太陽なしでは、この世は闇です。何も見えません。見るという行為自体が太陽的行為です。つまり太陽を第1ハウスに置くのは意義深いことです。世界チャートですとかに上昇ですから木星を第一ハウスに置くことになります。悪くはないけれど、というのは木星は眠れる太陽、しかし太陽よりは意義は落ちます。

 サイン  高揚天体
 おひつじ 太陽   第1ハウス

 説明の便宜上、アクシデンタルアセンダントをおひつじにします。おひつじと第1ハウスが普遍的に対応するわけではありません。以前解説したようにアセンダントはアクシデンタルに設定することができます。以下の説明もその一つの傍証です。アクシデンタルにアセンダントを決めたとき、どれだけ理屈がつくか、これが占いの力です。

 カルディアンオーダーからすると、太陽の外側の天体である土星木星、火星の高揚サインを決めなければなりません。ソーラーハーフとルナーハーフのコンセプトを知っていればこれは簡単です。
 土星はオポ的な天体ですからおひつじの反対側、てんびんが高揚サインとなります。土星がジョイとなるサインはみずがめで、てんびん△みずがめでもありますから理屈付けとしては強力です。理屈がもっともらしいほど占いは当たるようになります。
 次に木星、これはかにです。どうしてかというと火星をやぎに配置せざるを得ないからです。おひつじをASCサインと仮定すると、アングルのサインは、かに、てんびん&やぎです。土星は文句なしに7番目のサイン、つまりパートナーのサイン。ナザレのイエスの言葉をまつまでもなく、伴侶というのは重荷、同一軛(くびき)につくようなものです。死ぬ(土星)までパートナーシップは解消できません。確かに西洋では死が二人を分かつまでと誓います。占星術の本場である西洋は、土星がてんびんで高揚であることを知っています。
 おひつじを第1サインとすると家族のサインはかにで、仕事のサインはやぎです。火星は仕事には非常に大切な天体ですから、火星をアングルサインに配置するとすればやぎしかありません。これはおひつじ対しオーヴァーカミングでリセプションでもあります。また火星は□的な天体でもあります。
 となると残りのアングルであるかにサインには木星です。ファミリィ、一家、一族の繁栄は木星の管理事項です。尊敬されるボスや父(太陽おひつじ)がオーヴァーカミングするのが4番目のサインである木星かに(一族郎党)です。

 サイン  高揚天体 ハウス
 おひつじ 太陽    1
 かに   木星    4
 てんびん 土星    7
 やぎ   火星   10

 

 ライツの一方である月はうおかおうしです。ソーラーハーフとルナーハーフでも世界チャートでもライツは隣接サインに配置します。では月はおうしとうおでどちらが相応しいでしょうか。これは明らかにおうしです。夜の女王である月は地のサインの第1トリプリシティロードです。月は水のサインでは第3のトリプリシティロードにしかなり得ません。それに月神というのは、エペソスのアルテミスで有名なごとく、地母神的性格がありますから地のサインのおうしに軍配があがります
 念のために付言します。正統占星術ではトリプリシティはドロセウス式を使います。
 さて残りは金星と水星のみです。誘惑的な天体である金星がうおで高揚なのは異存がないでしょう。カルディアンオーダーからするとASCサインがなんであれ、第12番目のサイン=第12ハウスは金星が管理するハウスです。ここではおひつじを第1ハウスと仮定しましたので。第12ハウスに対応する天体は金星です。うおは堕落のサインとして有名なところで、金星の快楽がいきつくところまで行くと、破滅的な第12ハウスとなります。金星をうおに割り当てると、金星と各天体の関係は次のようになります。
 金星と太陽はアヴァージョン。第12番目はお天道様に顔向けできないサイン=ハウスです。
 金星と木星は、金星うお△木星かにです。リセプションでもあります。金星の悦楽を存分に楽しむことができます。その果ては身から出たさびの第12ハウスとなります。
 金星と土星はアヴァージョンです。しかし金星はてんびんを管理しますから土星を意識しています。しかし金星の欲望に負けて第12ハウスです。土星(克己)は金星を見ていませんから第12ハウスの金星を制御できません。
 残りの水星。水星はあいまない天体ですからどこに配置してもokです。しかしながらふたごだけはダメです。このチャートは第1ハウスに太陽ですから形式的には夜チャートです。水星は女性サインに置くべきです。それにできれば、他の天体の対向のサインに配置したいところです。両極性は占星術の根本原理なので。そうなるとおとめかさそりしか残っていません。どちらが良いでしょうか。それは読者のお好みでどうぞ。ただ占星術的センスが問われます。
 大凶性である土星がライトの反対側、これは適切です。ソーラーハーフ&ルナーハーフ、世界チャートでもそうなっています。しかし中立天体である水星がセクトライトの月おうしの反対側のさそりで高揚なのは如何なものか?
 水星おとめならセクトライトの月おうし△水星おとめ、こっちのほうが適切でしょう。
 ちなみに故アラン・ホワイトは、昼チャートの水星はふたごで高揚となるかもと考えていたようです。しかし一般論としては昼夜を問わず、水星はおとめで高揚としておくのが無難です。

 

 サイン  高揚天体 ハウス
 おひつじ 太陽    1
 おうし   月    2
 かに   木星    4
 おとめ  水星    6
 てんびん 土星    7
 やぎ   火星   10
 うお   金星   12

 

 ハウスは、あくまでアクシデンタルにおひつじを1番目とした場合限定のストーリーです。

 

  米国では「the first astrology book」として定評ある本です。よってこれが難しいというのであれば(本格的)占星術に向いていません。占星術を大衆化しすぎると、どうしても偽物臭がたちこめます。ただ向き不向き、本と読者の相性はあります。問題なのは日本語で読める本場の the first astrology book はこれぐらいしかないことです。

 


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