三人のハリー(Haly)

 このハリーは女性向きの名前らしい。荘園とか牧草地の邸宅という意味からきているようです。ただ今日述べるハリーはアラビア語の元音をラテン語にあてたものなので荘園という意味はありません。

 

 木星が管理するとされる数である命数3には芋蔓式な魅力があるようです。

 御三家、三銃士、三顧の礼、背番号3、三角形、トリプリシティ、二度ある事は三度ある、仏の顔も三度まで、三度目の正直。正直(honesty)は木星が象徴するキーワードです。

 ジョン・フォード監督の「三人の名付け親」、ジョーゼフ・L・マンキーウイッツ監督の「三人の妻への手紙」なる映画もありました。西部劇を作る人であるジョン・フォードはある意味米国一の監督ですし、マンキーウイッツもアカデミー監督賞を2度受賞している有名な監督です。ただマンキーウイッツは脚本家としてより有能で、また映画史的にも脚本家としての方が重要です。占星術的観点から検討に値する有意義な誕生図の持ち主です。

 マンキーウイッツ監督の誕生図はディグニティは高くありません。しかも逆行水星Rが文筆の第3ハウスでコンバストです。にもかかわらずハリウッド史上伝説的なシナリオライターです。成功不成功はチャートよりも本人次第?。ただしセクトライトの月てんびんがMCにアンギュラー側からタイトな合です。アングルの強力さを示す一つの見本です。

 絵本ならトミ・アンゲラー(ウンゲラー?)の「すてきな三にんぐみ」が有名かもしれません。ウンゲラーは国際アンデルセン賞画家賞受賞作家ですからディグニティは高いと言えましょう。彼のASCルーラn水星いては、いわゆるデトリメントですけれど、n月かに、MCルーラn土星やぎで高品位です。デトリメントは反抗的ではありますが成功しないわけではありません。セクトライトのICルーラn太陽いてと最良天体であるn木星ししは、いわゆるミュウチャルリセプションです。最良天体の木星が管理するサインのいてに4天体があり、しかもアングルの第7ハウスですから、成功は約束されています。水星も金星もいて26度です。モダン占星術では26度は文筆の度数とされていますが、そうなのかもしれません。またいてサインの24度(21世紀には25度)から27度(21世紀には28度)はさそり座(←サインではなく星座)の毒針ないし毒液を象徴する度数です。どうやら彼の作風(ホラー風の絵、刃物大好き)を象徴してもいるようです。「ゼラルダと人喰い鬼」など、さそりの毒針なしには書けそうもありません。

 

 さて

 占星術界で三人といえばロバートとハリーです。ロバートについては以前記述しました。

 リリーがCAでハリーと呼んでいるのは、以下の三人のうちの誰かです。このうち最も有名なのはチュニジアのハリー・アベンラゲルです。ゆえにリリーが言うところのハリーは恐らくはハリー・アベンラゲルのことです。とはいえ一人目のハリーは伝統的占星術では無視できない存在です。

 

 実は重要な一人目のハリー。

 日本ではほとんど話題になりませんけれど一人目のハリーは古典度という観点からは最もそれが高いハリーです。

 ハリー・エンブラニ、Haly Embrany(または al-‘Imrani)。

 955年もしくは956年没。数学者、占星術師。

 このハリーの弟子が10世紀のトップ占星術師であるアルカビシです。

 一人目のハリーはイレクショナル占星術に関する重要な著作を残しまた。’Book of choices’。

 

 二人目の大物のハリー。

 ハリー・アベンラゲル(ヘイリー・アーベンレイジル、Haly Abenragel), al-Rijal。1037年以降没。

 このハリーの表記として、ダイクス博士は al-Rijal を使っています。ハリーを使うと紛らわしいからかもしれません。

 イレクションやマンデンの分野でも歴史に名を残しました。中世の占星術の集大成的占星術師です。古典という用語を使うなら古典はこのハリーまで。ハリー以後の”古典”占星術はどうにもモダン臭すぎます。セクトを軽視するのは”モダン化計画”の回し者です、冗談ではないのです。

 

 三人目のハリー。

 リリーがCAで言うところのハリーは、文脈によってはこのハリーである可能性もあります。

 ハリー・アベンルディアン。アリ・イブン・リドワン(Ali ibn Ridwan)。Wikipediaに日本語の記事があります。その記事では998年頃生まれとなっていますけれど988年頃の間違いです。

 中世イスラムのほぼ最後の有名占星術師です。

 

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