ディレクション

 セカンダリディレクション(ダイレクション?)いわゆるプログレス(代表的には1日1年法)の起源は、史家のホールデンによるとケプラーだとのことです。

 しかしながらセカンダリディレクションなる技術の確立に貢献した度合いということになるとプラシーダス(Placidus de Titis、1603-1668)が筆頭です。

 日本では一部に誤解があるようですが、商人出身のにわか占星術師ながら情熱だけは人一倍あったファイアサイン強調のアラン・レオは商売上の事情からパクっただけです。アラン・レオは7天体中5天体がファイアサインです。リリーは7天体中5天体が地のサインです。反リリー派の筆頭格のガドベリ(Gadbury, ガドブリ?)も地のサイン強調です。占星術師でファイアサイン強調というのは珍しい。後述するモダンの三巨匠にもファイアサイン強調など一人もいません。

 

 プラシーダスがセカンダリディレクションの本家的存在になったのは次の二つの理由からです。

 1つ、プラシーダスはソーラーリターンなるテクニックを認めませんでした。では予測技術には何を使う?。必要は発明の母。彼が発展させたのは、プライマリーディレクションセカンダリディレクションです。

 2つ、プラシーダスは大学の数学科の教授でもありました。歴史上の有名占星術師は、数学者を兼ねている方が多い。新しいハウス分割方式は数学者でなければ開発困難です。またプライマリーディレクションの計算法の開発も同様です。

 アルカビシ、レギオモンタヌス、カルダーノ、モラン(Morin)そしてプラシーダス、皆数学者でもあります。占星術斜陽化が進んだ17世紀、セカンダリディレクションを開発できる数学力を持っていたのはプラシーダスぐらいのものでした。

 

 占星術には予測テクニックが数多くあります。そのうちあまり当たらないのがトランジットとセカンダリディレクションです。

 これがモダン占星術の辛いところ。わざわざ当たらないテクニックを選んでいるのでしょうか。

 今ではすっかり忘れ去られていますが、20世紀モダンの三大巨匠、セファリエル、カーター&ロブソンは、プライマリーディレクションが最良の予測テクニックであることを認めていました。

 それではプライマリーディレクションを使えば良いではないか?、そう思うかもしれません。しかしそうは問屋がおろしません。以前当ブログで本邦初の指摘をしました。占星術はコストも大切な要素です。

 占星術ソフトとパソコンがない時代、プライマリーディレクションの計算は大変な手間と労力を要しました。プライマリーディレクションなる予測テクニックの主要な源流は言うまでもなくプトレマイオスです。実はプラシーダスはセカンダリーよりプライマリーでの貢献の方が大きい。セカンダリーはあまり当たらないので。プラシーダスの最大の業績は、今までのプライマリーは間違っている。自分が開発したこれこそがプトレマイオスが提唱していたプライマリーの方式だ、ここにあります。これが本当かどうか我々には確かめる術がありません。しかしながら、プラシーダス式のプライマリーが今や業界標準?です。また当ブログでも、プライマリーはプラシーダスキー(いわゆるsemiarc)の使用を推奨します。

 

 せっかくプラシーダスが画期的なプライマリーの方式を開発したのに21世紀になるまでこれが流行らなかったのは、プライマリーはコストがかかりすぎたからです。

 あなたが20世紀前半にプライマリーディレクションを使いたいと思ったとします。一体どうやって計算します?

 これは文献をあたれば何とかなるかもしれません。ラテン語ができればプラシーダスの原典を当たるのも良いでしょう。それで一応計算はできたとします。さて、その計算結果が正しいかどうか、どうやって確認したら良いのでしょうか。これはいわゆる素人には無理です、並の占星術師でも無理です。この方面に詳しい数学者に確認してもらうぐらいしかないのでないのでしょうか。ここまでコストをかけられるのは、よほどの大金持ちでないと無理な相談です。

 20世紀モダンの巨匠セファリエルは、プライマリーに正面から取り組んでいます。20世紀に書かれたプライマリーの記述では彼が最良なかもしれません。しかし20世紀モダンで流行ったのはセカンダリーいわゆるプログレスです。低コストですから。

 カーターとロブソンは、プライマリーが最良だとは認めながらも、計算困難なプライマリーの次善の策として、いわゆるシンボリックディレクションを推奨しました。一度一年法、ソーラーアークディレクションなどは、シンボリックディレクションの例です。

 20世紀モダンも様々で予測技術を重視しない立場もあります。しかし彼ら三巨匠は違います。当てることに執念を持っていました。トランジットは当たらない、これ常識。トランジットを実用化するにはタイムロードのテクニックが必須です。

 面白いのはロブソンで、セカンダリーをタイムロード的に使うことを提唱しています。しかし業界から完全無視されてしまいました。

 

 プライマリーディレクション > シンボリックディレクション > トランジット

 

 当たらないトランジットを何とか使えるようにしたい。しかしプライマリーは計算困難。カーターは、プライマリーの計算は滅多に成功しないという趣旨を述べています。電卓すらない時代ですから。

 シンボリックディレクションは何種類もあります。20世紀後半のモダンは、ソーラーアーク以外はほぼ捨ててしまいました。結局のところ、アングルをどう動かすか、ダイレクトさせるか、これにつきます。プライマリーが最良です。しかし当店としては、初級者は一度一年法でok、この立場です。アングルを動かす方法としては最安値です。そのわりには当たるからです。

 

end