失せ物問題の謎

 伝統的占星術のホラリー占星術に本格的失せ物探しはなかった!?

 これ、誰も言いませんけど、本当です。これも当ブログならではの指摘です。

 少し考えれば、これは当然です。割に合いません。ペン1本紛失して、占星術師のところに失せ物探しを頼みに行く人は普通いないわけです。

 古代から、宝物探し問題(特に地中に埋められた宝探し)と盗難問題は、非常に重要なテーマでした。失せ物探しは、それらの問題の付属品扱いです。失せ物問題を独立して論じたオーソリティズは、恐らくいなかったはずです。

 失せ物探し問題をある程度本格的に論じたのは、恐らくボナッティです。ところが、ボナッティは、盗難問題を失せ物問題に、ある意味すり替えています。このすり替で当たることもあればあまり当たらないこともあります。

 ボナッティが言うには、盗難であれそうでない場合であれ、ASC, 月、第2ハウスを検討せよ、とのこと。盗難なら第2ハウスが重要なのは当然です、では失せ物は?。第2ハウスが効くことが多いようですが、いつもそうであるとは限りません。

 リリーは、失せ物問題は第4ハウスマターで論じています。第4ハウスの問題の章で失せ物問題を論じていて、まず第2ハウスを検討せよ、です。しかしこれでは当たらないというので、リリーオリジナルの方式を提案しています。まさにモダン占星術の“太祖”です。リリーのクリスチャンアストロロジーは実占例が多数載っていることが得難い価値です。ところが失せ物問題の実例は全く載っていません。

 一方でリリーは失せ物問題を第7ハウスマターでも論じています。この混乱は、ある意味伝統に忠実だと言えます。失せ物問題は第7ハウスマターを第2ハウスにすり替えた疑いがあるからです。第7ハウスは人や動物の逃亡問題と盗難問題のハウスです。失せ物問題のハウスかどうかは実は不明です。盗難問題を誤解したのか、失せ物に応用したのか、伝統的占星術では明言されていません。この章で、リリーは盗難問題を26ページの紙幅を割いて種々論じています。また逃亡問題にも約9ページと相応の紙幅を割いて論じています。ところが失せ物は月が象徴するとはしているものの、2ページプラスα分しか記述していません。

 このように伝統的占星術では純粋な失せ物問題は無かったにほぼ等しい。第2ハウスマターとして本格的に論じた例を見たことがありません。モダン占星術ならもちろん多数あります。とはいえモダンでも失せ物問題にどう対応するか諸説紛々ですが。

 伝統にせよモダンにせよ失せ物問題は、盗難問題または宝探し問題を準用しているだけです。それでよいのか、よくないのか、本格的に論じたものは恐らくいません。当ブログが恐らく世界初です。快挙なのか愚挙なのか。

 難題の失せ物問題、伝統的占星術では何しろ実例“0”です。リリーを太祖とするモダン占星術における失せ物問題の実例は多数あります。アンソニー・ルイスなどその代表です。失せ物問題に強いのがルイス本の強みです。ここは一つ、伝統的占星術においても実例が欲しいところです。地獄に仏、失せ物問題に“使える”実例が youtube に公開されていました。前回紹介したこれです。

 

ヘルメス学園通信コース/サンプル動画④「ホラリー占星術」。

 

 この動画は、モダン占星術での失せ物問題に対するアプローチです。すなわち第2ハウスマターです。アルムーテンを全く使うことなく、失せ物についての的確な情報がすぐに得られました。

 

 では伝統的占星術ならどうする?

 前回および今回の当ブログで、失せ物探しは第2ハウスマターではないかもしれない、古典的には何ハウスマターか不明瞭との趣旨を書きました。古典的には失せ物は月が象徴します。しかしハウスマター不明ではホラリーで占いにくい。

 業界の常識として、失せ物問題は、一応第2ハウスか第4ハウスということになっています。特にモダンでは第2ハウスマター(所有物の問題)とすることが多勢です。しかしモダンでも、紛失ではなく置き忘れは第4ハウスだという説もあります。紛失と置き忘れの境目はあいまいなことも多い。

 迷ったら個々のチャートに聞きましょう。今お借りしているチャートでは、第2ハウスはおうし、そのルーラは金星です。第4ハウス=ICはかに、そのルーラは月です。失せ物はACアダプターです。ということは、これは恐らく第4ハウスマターです。実際置き忘れでした。失せ物が絵画や宝飾品などであれば当然第2ハウスマターです。この例では第2ハウスおうしで、そのルーラは金星(美品)ですから。

 

 では次回は、伝統的なディグニティズを使って、実際にアルムーテンを算出してみたいと思います。

 

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