燦然と輝く

 超新星、燦然と輝く、天才が書いた占星術書。

 糸川英夫の細密占星術、1979年。サブタイトルが「一億人分の一億の運命算出法」。

 

 日本占星術史上燦然と輝くモダン占星術の副読本的書籍です。当時としては相当に凝った内容です。サブタイトルが主張するごとく、博士は「だれにでも手軽に楽しめるように配慮した」つもりだったのですけれど、「表現が難しく、とてもついて行けない」というクレイムが少なくない読者から来たそうです。

 余計なことを!。

 このクレイムに配慮した結果、糸川博士の次著「未来占星術」からは“凝り”が消えて味気ない内容となってしまいました。

 

 ちなみに糸川博士と言えばロケット開発の父という印象が強いようですが、当ブログ的には博士の経歴で注目すべきなのは、キャリアのはじめの一歩として陸軍(火星)の戦闘機の開発に携わったことです。なかでも一式戦闘機(ニックネイム隼)の空力の担当だったことです。その日本国への貢献は永遠です。

 博士の生まれ時刻は不明です。しかし出生前の新月図(1912年7月14日22:13JST)のASCは恐らくおひつじサイン(←火星が管理)なのでしょう。すると木星いてが占星術&出版のハウスに入ります。占星術ナチュラル表示天体の水星は新月図でも誕生図でもししサインですから、水星△木星となって、占星術界に貢献できることがよく象徴されています。

 糸川博士の生年月日はごく普通の人の生年月日で、これと言って顕著な特徴は見つけにくい。しかし出生前新月図は天才が生まれてもおかしくないチャートです。博士の生年月日は、新月図ではセクトライトであった月がてんびんサインです。すると面白いことにこの月は、新月図の他の6天体、誕生図の他の5天体を見ています。多才です。天才誕生の期待が持てます。

 この月が見ていない唯一の天体は、誕生図ではおとめサインに移動した火星(軍神、陸軍)です。確かに博士は、陸軍に隷属せざるを得ない(←おとめ第6ハウス)飛行機会社の技師を退職してしまいました。念のため付言します。第6ハウスは奴隷のハウスです。

 

 糸川英夫の細密占星術、あるハウスにこの天体があるときはこれこれ、あるサインにあの天体があるときはあれあれ(?)、とモダン占星術らしく使えない記述も多い。しかしモダン占星術の本ながら伝統的占星術の技法の影響を受けた記述が少しあります。特に恋愛、結婚、相性の節は、当時の日本では“ハイカラ”な内容でした。その節の中でも男女別に結婚運の占い方を示した152ページから156ページの記述は、日本占星術史の画期となった異色の内容でした。原著が日本語による占星術の本で、結婚運をここまで詳述したものは現在にいたるまでないかもしれません。

 この本の巻末、279~280ページには英語本の参考文献が挙げられています。糸川英夫の細密占星術(以後細密占星術と称します)の最大級のネタ本となった文献は、Grant textbook series のようです。Grant textbook series は、vol1からvol4の4巻のシリーズであり、細密占星術ではそのうちの3巻(vol2~vol4)が参考文献として挙げられています。ちなみに、細密占星術では、その著者を G. Grant としていますけれど、これは間違いです。このシリーズの著者は、Catharine Grant と Ernest Grantです。後者の Grant は、AFA(米国占星術師連盟)の設立者三人のうちの一人です。英国系のマーガレット・ホーンに対抗すべく、米国系のテキストの決定版として企画されたのが Grant textbook series だったのかもしれません。

 

 細密占星術では、男性の結婚運は月と金星で、女性のそれは太陽と火星で占うことになっています。一理あります。

 細密占星術の154ページから156ページには女性の結婚運のアフォリズム(格言)が16項載っています。なんと金星が一度も登場しない。これはやりすぎ。金星は結婚のナチュラルシグニフィケータなので、女性の誕生図であっても結婚運をみるには重要です。

 当店認定のモダン三巨匠の一人ロブソンは、結婚運は、男性のチャートでは月と金星、女性のチャートでは太陽、火星&金星を検討せよとしています。常識的な意見だと言えます。

 では伝統的占星術では?

 伝統派も種々様々ですけれど、男性であれ女性であれ、金星のトリプリシティルーラ(triplicity lords)をまず検討すべきでしょう。それがドロセウス以来の伝統です。

 

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