1524年2月の大会合

 12世紀以降、欧州に占星術が還ってきました。12世紀は、いわゆるラテントランスレータが活躍した世紀です。その代表がセビリアのジョン(スペインのジョン)です。西洋占星術の用語はジョン起源によるものが多い。またジョンが翻訳した文献は西洋占星術史上最大級の占星術師ボナッティのリソースでもあります。

 中世欧州の占星術はアラビア色が濃い。サール、ウマーアルタバリ、アブアリ 、アブマシャー、アルカビシなどが西洋占星術の直接的ネタ元です。

 ところが15世紀後半から欧州の占星術はアーリーモダンの時代に入ります。歴史占星術的に言えば海王星の影響を受けやすい時代になったということです。想像力(海王星)を重視するのがモダンの風潮です。想像は妄想に転化しがちです。欧州の占星術界のレベルは大いに低下することになりました。西洋占星術の歴史はモダン化の歴史です。モダン化は欧州に占星術が還ってきた時から始まっています。16世紀以降はモダン化の流れが本流みたいになってしまいました。これが限界にまで達したのが17世紀の英国です。

 占星術は何度も絶滅の危機に瀕してきました。17世紀の斜陽化以外は主として外部的要因です。

 古代なら西ローマの滅亡、東ローマのキリスト教化。中世の危機は、サーサーン朝の滅亡、スペインの国土回復運動、アッバース朝へのモンゴル侵攻などです。伝統を引き継ぐには環境が悪化しすぎました。

 史家のホールデンによると、キリスト教徒によるスペイン再征服の結果、70の図書館が破壊され100万巻以上の書物が破壊されたとのことです。破壊されずに残ったのは数千冊だとのこと。

 しかし17世紀は特段の外部的な危機があった訳ではありません。ガリレイが死去しニュートンが生まれるという時代の風潮だったのか、とにかく占星術は廃れてしまいました。需要が急減しました。リリーのようなスター占星術師が活躍した世紀なのに不思議といえば不思議です。これが社会や歴史のダイナミズムというものなのでしょう。希望や願望とは反対方向に作用することがままあります。

 アーリーモダンの虚妄ぶりを象徴するのが1524年2月の天体配置に基づく予言論争です。何十もの論文が発表されるほどの大騒ぎでした。大洪水が起きるのか、起きないのか?

 1524年の2月にみずがめサインとうおサインに天体が集中する時期がありました。これを指摘したのが、ヨハネス・シュテフラー(1452-1531)です。数学者、天文学者占星術師でした。シュテフラーは1499年に天文暦を刊行して、1524年2月のいわゆる惑星直列を指摘したのです。

 これをきっかけに大勢の論客が言いたい放題。サールやマブマシャーの時代からすでに約650年以上、正統的なマンデン占星術のテクニックは、ほぼ失われてしまったようです。

 

 アングルを決めずに天体配置だけであれこれ言ってもあまり意味がありません。

 

 参考までに、グレゴリウス暦1524年2月10日15:16JSTの天体配置を以下に示します。

 これは昨今流行りのグレイトコンジャンクションです。幻影の星である海王星が火星と大会合に挟まれています。素晴(アフォ?)らしすぎます。

 月 やぎ

 水星、太陽、金星&ヘッド みずがめ

 火星うお5度、海王星うお7度、木星土星うお9度

 

 ルターも絡む1524年に起きたドイツ農民戦争。反乱が起きたのはミュールハウゼンから。その地で上記日時のチャートを立てるとASCはみずがめ5度となります。水星がみずがめ7度。水星はIC(土地)と死の第8ハウスのルーラです。確かに大勢人が死ぬような事件が起きても不思議ではありません。このチャートは夜チャートで、最悪天体の土星は反乱の第12ハウスルーラです。王を示すMCサインはいてで、木星うおはルーラーシップを取っていますから、結局は王の側(諸侯の側)が勝ちます。

 1524年のミュールハウゼンでの春分図のASCはさそりで、第6ハウスおひつじに太陽、火星、金星&水星です。ルターは、さそりに4天体のさそり強調の誕生図です。セクトライト の月はおひつじです。まさにルターが原因の戦争です。

 

end