フランケンシュタイン

 第2ハウスからフランケンシュタイン

 

 ホラリー占星術と言えば、失せ物探し、そう思っている方がいるかもしれません。そういう趣旨の記述は書物やネットでよくみかけます。しかしながら、これは優れてモダン占星術的な考え方、アーリーモダン以後特に20世紀的考え方です。

 伝統的には、失せ物探しは、宝探しまたは盗難問題の“おまけ”扱いでした。ホラリー占星術の最大級のネタ元のサールなど、失せ物探しは事実上ほぼ述べていません。このことは、ダイクス博士がアラビア語版のサールを英訳してはじめてわかったことです。

 ラテン語版のサールでは、失せ物探しについて、おまけ扱いとは言え少し記述されているような印象を受けます。これはラテントランレーター達がそう編集したからです。アラビア語版ではそんな記述はありません。

 いわゆる西洋占星術の元祖的存在のボナッティは、ホラリーでの盗難問題について、サールをほぼそのまま継承していますけれど、サールが記述していない失せ物問題を追加しています。ボナッティが参照したのはラテン語版のサールなので当然と言えば当然です。

 リリーは、ボナッティほどサールを忠実に継承してはいませんけれど、第7ハウスマターで失せ物問題を記述しているのは、伝統通りです。アーリーモダンのリリーの世紀(17世紀)までは伝統的占星術の時代だと言えます。

 

 面白いのはアーリーモダンではなくモダンの時代になったウイルソンです。モダン占星術の祖の一人ウイルソンは、ホラリー占星術は失せ物探しのような取るに足らない問題を解決するのに向いていないという趣旨を記述しています。

 ごもっとも!

 実際、アンソニー・ルイス クラスの巨匠ならともかく、そんなに当たりません。

 

 と言いながら、ウイルソンは第2ハウスマターとしての失せ意物探しのテクニックを結構詳しく記述しています。失せ物探しを第2ハウスマターとして確立したのはウイルソンかもしれません。

 

 失せ物探しは第2ハウスマターで ok?

 

 伝統的には、第2ハウスの質門は、儲かりまっか的な質問、財産を得ますか的な質問がほぼ全てです。失せ物探し問題は何ハウスの問題なのかはっきりしません。しいて言うなら第7ハウスマターです。あるいは第8ハウスマターかも。Al-Biruni は、紛失物は第8ハウスとしています。前回まで説明してきたチャートでは、木星さそりが第8ハウスにインしていました。失せ物が友人の職場にあるとズバリ示しているのは木星さそり第8ハウスでした。

 しかしながら現代においては、第2ハウスを無視できません。中世まではあいまいだった私的所有権がなるものが近代になって確立したからです。

 フランスの無政府主義者のピエール・ジョゼフ・プルードン(1809-1865)は、「所有とは盗みである」と言う趣旨を述べたそうです。Wikipedia の記事では「財産、それは盗奪である」となっています。

 プルードンの格言、占星術的には一理あります。盗難問題においては、伝統派でも現代派でも第2ハウスを無視できないからです。

 結局はチャート次第なのですが、天王星発見以後の現代においては失せ物問題と言えば、まずは第2ハウスを検討すべきなのでしょう。

 

 Anarchy、未秩序 はもちろん天王星が象徴します。支配者がいない状態を意味する言葉は古代ギリシア時代からあったようですが、近代のアナキズムは、ウィリアム・ゴドウィン(1756-1836)を先駆とするようです。天王星が発見されたのは1781年ですから、見事に照応しています。

 ゴドウィンの生まれ時刻不明です。生年月日は1756年3月3日です。

 テイルの真値うお10度

 太陽うお13度

 天王星うお15度

 水星Rうお25度

 

 うおを管理する木星Rは逆行していて、てんびんサインにいます。てんびんとうおはアヴァージョンの関係です。アヴァージョンと言うのは管理不能状態ですからアナキズムの先駆者にふさわしい生年月日と言えましょう。

 なお太陽と木星Rはアンティションでもあります。

 

 ゴドウィンの娘は、フランケンシュタインで有名なメアリー・シェリーです。シェリーの誕生図は、うおサイン強調の父親とは反対側のおとめサイン強調型です。火星、太陽、天王星&水星がおとめサインにあります。この天体集中に対して木星Rおひつじがアヴァージョンのサインにあることは父から娘に遺伝しています。

 ASCルーラのt月□t水星おとめ ですから、生まれながらの水星おとめ的職業の適性があります。水星おとめの筆頭格的資質の職業は作家です。

 なおt月がアプローチする天体がいつも職業星となるとは限りません。以前述べたようにチャート次第です。しかしt月がアプローチする天体を無視することは適切ではありません。

 いわゆるホールサインハウスでみたときのシェリーの第2ハウス(livelihoood, 生計)はししサインです。ししに天体はありません。太陽おとめは第3ハウスにあります。この太陽は、第10ハウスの高揚ルーラです。第3ハウスの事柄が名誉(←第10ハウス&高揚)を約束します。

 第3ハウスは兄弟ないし姉妹のハウスです。ここは第9ハウスと兄弟のハウスで、いわゆるスピリチュアリティのハウスです。古代では月がジョイとなる女神のハウスでした。古代では第9ハウスとともに divination, 占いのハウスでした。Writing, 物書きは、第3ハウスの関連と言っていいでしょう。

  小説「フランケンシュタイン」は書簡体小説でもあります。手紙となると第3ハウスの色彩が濃くなります。

 

end