完全

 占星術で「完全」を象徴するものは何か、完璧主義的なサインならおとめということになるかもしれません。長期の第9ハウス?。木星?、ゼウスは最高神ですが相当に浮気な神です。どうも適当なものがありません。天と地、昼と夜、吉と凶、女性格と男性格。ポラリティ、両極性が占星術の原理なので。

 

 星の英知と暮らす 西洋占星術 完全バイブル、キャロル・テイラー著、税込3960円。

 原題はこうです。

 Astrology: Using the Wisdom of the Stars in Your Everyday Life

 

 原書は2018年9月の刊行で、米アマゾンでの価格はハードカヴァー版で16ドル59セントです。

 

 この本の売りは、ガイド本書的記述が濃い第6章と第7章です。「占星術完全ガイド」なる邦題の本がすでにありますから、出版社が完全バイブルとしたのかもしれません。「完全マスター 予測占星術」なる本もあります。日本の占星術界隈では「完全」なるキャッチコピーは数字を持っているのかもしれません。

 

 この本の Grade Level は小学3年から高校3年向けです。小中学生が読むモダン占星術の入門書としては最良クラスの一冊です。高校生だとやや物足りないはずですけれど、星占いの本ですら一度も目にしたことがない人であるなら、最初の一冊として十分使えます。

 明確に心理占星術系の著者でその系の本なのですけれど、原題から推察できるように実用的なガイド本でもあります。

 「西洋占星術 完全バイブル」の未来予測法は、トランジットのみです。この本の217ページには、トランジットすなわち天体の運行そのものについて、なかなか意味深なアフォリズムが記述されています。

 しかしながらトランジットのみによる予測はギャンブルです。

 日本の寸鉄、当たるも八卦当たらぬも八卦、日本らしい「いき」なアフォリズムと言えましょう。

 

 西洋占星術 完全バイブル。惜しいのはプロフェクションを導入していないことです。

モダン占星術家でもある Charles Obert さんの名著、「The Cycle of the Year: Traditional Predictive Astrology」は2018年の7月の刊行です。この本以後、モダン派であれ伝統派であれ、予測テクニックにプロフェクションを導入していない本は、読む価値がほぼありません。

 「Astrology: Using the Wisdom of the Stars in Your Everyday Life」の刊行は2018年の9月なのでプロフェクションを導入していないのは仕方がないとは言えます。プロフェクションを知らなかったのか、知っていても導入しなかったのか、聞いてみたいところではあります。

 

 西洋占星術 完全バイブル。伝統的占星術派の人が読む価値があるでしょうか。これは微妙です。伝統的占星術なるものを全く知らないなら、この本から占星術に入門するのもありです。伝統的占星術の日本語の入門書は選択肢が少な過ぎるが現状だからです

 traditional astrology の貴重な邦訳本もありますけれど、結局原書を読まなければ意味がわかりにくいことがままあります。英語本なら多少選択の余地は広がります。例えば Charles Obert さんの「Introduction to Traditional Natal Astrology」、「the classical seven planets」など。

 

 “本当”の占星術入門の最高峰本、日本占星術界の“明治維新”本とでも言える書籍がそのうち日本でも出版されるはずです。明治維新には古代の復古的な側面がありますから、占星術界の古代復古に期待したいと思います。

 

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