オバート翁

 ダイクス博士のお弟子さんであり友人でもある Charles Obert(チャールズ・オーバート)  さんの邦訳書、題して「古典占星術」が出版されるようです。ここでは Obert をオバートと読むものとします。

 オバートさんは、1952年3月7日生まれです。翁という尊称がぴったりの風貌の持ち主です。つまりその誕生図は土星に特徴があります。ASCサインはやぎです。それゆえにか、土星だけをテーマにした本を書いているぐらいです。Saturn Through the Ages: Between Time and Eternity、2019年。

 オバート翁は、当然にもともとはモダン占星術愛好家でした。占星術業界へのダイクス博士登場の影響などもあって、オバート翁は伝統的占星術を熱心に研究するようになり、現在は伝統的占星術師でもありモダン占星術師でもあります。モダン占星術を放棄はしていません。モダン占星術界はもっと伝統的テクニックを採用するべきだ、だって当たるから、という立場のように当方には見えます。それにチャートの読み方は伝統的占星術のテクニックを駆使するモダン占星術家のように当方には思えます。ハウス分割方式は、ホールサインハウスを主として使っていますけれど、ときにはプラシーダスも使います。ホールサインハウス以外のハウス方式を使うとどうしてもモダン臭く感じます、これは致し方ないところ。逆にホールサインハウスだけをハウス方式として採用したとしても、それだけでただちに伝統的占星術師になれるわけではありません。

 

 オバート翁の占星術界へのデビュー作は、「Introduction to Traditional Natal Astrology: A Complete Working Guide for Modern Astrologers」、2015年2月11日刊です。

 この本の邦訳書、上述の「古典占星術」は、もちろんカイです。伝統派であれモダン派であれ、占星術やる以上、必読です。伝統派を志向するのかモダン派を志向するのか、この本を読んでからの話しです。読みやすい占星術の入門書としてはベストの一つです。

 On the Heavenly Spheres と比べてどうでしょうか。On the Heavenly Spheres は伝統派であれモダン派であれ業界トップの入門書、さすがにこれは越えていません。しかしながら、On the Heavenly Spheres はダイクス博士登場以前の書籍であり、博士の影響をほぼ受けていません。一方、「Introduction to Traditional Natal Astrology」は、ダイクス博士の影響を受けています。チャートの読み方を学ぶという点では、「Introduction to Traditional Natal Astrology」のほうが簡にして要を得ています。

 伝統的占星術の文献の泣き所の一つは、チャートの読み方がほとんど書いてないことです。うんざりするほどの多数のテクニックが書いてあるのですけど、さて実際にチャートを読もうとすると、どう読んでいいかわかりません。これは当然で、詳しくは弟子入り後に教室で、なので。占星術は一子相伝的な技芸です。もっともモダンだって事情は似たようなものですが。

 

 オバート翁の誕生図

http://www.horoscope-tarot.net/horo/s/65496ac62e23610e709409f13c68d158.html

 

 ヘッドの平均値はみずがめ29度、真値はうお0度です。真値のほうが実態に合っているようです。ロットオブフォーチュンがおとめ7度第9ハウスだからです。ヘッドがうおサイン、テイルがおとめサインなら占星術の本を書く宿命を背負った生まれであることの説明が容易です。上述の「Introduction to Traditional Natal Astrology」が出版されたのはオバート翁62歳のときです。すなわちうおサイン第3ハウスの年です。うおサインにヘッド、太陽&水星(←誕生図の第9ハウスルーラ)があり、その年の出版のハウスであるさそりサインにMCと火星があります。ヘッドがみずがめサイン第2ハウスにあるとしても本の出版はできたのかもしれませんけれど、物書きの第3ハウスであり、その年の代表サインであるうおにヘッドあるとしたほうが説明が容易です。

 

 さてオバート翁の水星はうお29度です。フォールでありいわゆる涙の度数です。こういう天体でも使えないわけではありません。現に60歳超えてから有名占星術師になり何冊もの本を出版しました。しかしながら水星はフォールであり、ぎりぎりの29度であることを止めるわけではありません。たとえば、オバート翁、渾身のジョークはこんな具合です。

 「Introduction to Traditional Natal Astrology」の235ページには glossary & index があります。たとえば Stakes の項ではその簡単な説目があり、ページ32とあります。

 不思議なことに238ページには Pluto すなわち冥王星の項があります。その説明はディズニーアニメの有名なキャラクターとあり、245ページを見よとあります。プルートは有名なネズミが飼っているペットの犬だというのは、業界では有名なジョークです。誰が言い始めたか不明ながら、冥王星嫌いのクリストファー・ワーノックかもしれません。

 さてオバート翁指定の245ページをみると、実は245ページは背表紙の裏であり実質最後のページであり白紙です。Pluto の説明など全く載っていません。

 オバート翁、渾身のジョーク、フォールの水星になっていなければ幸いです。

 

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