古典 vs 伝統的

 当ブログでは用語として伝統的占星術を推奨します。これが世界基準だからです。海外でも古典、classical を使う占星術師はいます。しかし少数派ですし業界をリードする占星術師はほぼ traditional、伝統的を使います。

 設立者がドイツ人でスイスに本社があるらしい無料ホロスコープ作成の定番サイト Astrodienst のチャートのオプションで用意されているのは、Traditional Astrology Options です。これが業界の現実です。また同サイトでは数年前?からホールサインハウスでのチャート表示のサービスを始めました。当ブログでしつこく何度も強調しているように最も由緒正しくしかも21世紀最先端のハウス分割方式はホールサインハウス なのです。

 

 17世紀まで、人物で言えばリリー派のコレー(1633-1707)や反リリー派の John Partridge(1644-1715)までが traditional astrology、伝統的占星術の時代です。

 アーリーモダンは15世紀半ばから始まりました。これがいつからアーリーが取れて単なるモダンになったのか、天王星発見の1781年からだと言えましょう。18世紀は占星術不遇の時代です。「西洋占星術の歴史」の著者ジム・テスターは占星術は死んだとまで書いています。テスターのその書物では紀元前6世紀から17世紀までの占星術史を扱っています。テスターの歴史認識によると17世紀末で占星術は死んだことになっているので、18世紀以降の歴史は記述なしです。

 伝統的占星術の時代が終わり占星術が死んだも同然の状態となったのが18世紀です。しかし天王星発見の刺激のせいなのかどうか1780年代から占星術は蘇ります。占星術復活に貢献した人物が誰あろうシブリーブラザーズの兄、Ebenezer Sibly(1752-1799)です。モダンというとアラン・レオとそれ以降が注目されがちですが、占星術大衆化(簡単化)以外の功績があまりないアラン・レオよりシブリーブラザーズの兄の方が歴史的には重要です。使えるテクニックを多く記述しているからです。正統占星術的な観点からは、シブリーの主著をモダンの筆頭的参考書にしたいぐらいです。以前述べたように歴史順に学ぶのが正統的な占星術の学習法です。リリー → シブリー → ラファエル1世とウイルソン → 20世紀モダン(代表例、セファリエル)、この順で学ぶとリリーはモダンの古典であることが理解できます。

 なお本格的モダンはラファエルからという説もあります。一理あります。トリプリシティとタームのディグニティや気質計算の説明に相当の紙幅を割くなど、シブリーには伝統的なところがまだ多くあるからです。

 しかしながらダントツの世界一の占星術史家のホールデンによると、アーリーではない本格的モダン占星術の時代はシブリーブラザーズの兄の登場から始まったことになっています。彼は医師でもありました。医師が著名占星術師でもあったほぼ最後の時代なのかもしれません。つまり伝統の名残がまだあったのでしょう。医師にして著名占星術師と言えば、リリーも影響を受けた9世紀の Abu Bakr、16世紀のカルダーノ(1501-1576)、フランスのモラン(Morin, 1583-1656)などを思い出します。彼らほど著名ではないもののリリーの先輩格であるロバート・フラッド(1574-1637)も医師、オカルティスト&占星術師でした。

 

 

 2020年代になっても古典なる時代遅れの用語を多用しているのは日本と China です。世界から取り残されなければ幸いです。ただし21世紀に主としてモダン占星術をやりたいなら、古典という用語もありです。17世紀英国の占星術がシブリーブラザーズ以降のモダンにとっては一大源泉であり古典であることは間違いありません。

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