モダンとトラディショナル

☆現代占星術(モダン占星術)vs 伝統的占星術(トラディショナル占星術

 両者の違いについて、ここ日本でもブログに書いている人が多数います。しかし適切な説明がなされているとは言えません。この辺が占星術後進国日本の限界なのかもしれません。

 

 英語まで範囲を広げると、デメトラ・ジョージ女史の説明が最も優れています。女史によるモダンと伝統の五つの違いの記事は、webにて無料公開されています。女史の教師としての能力は業界トップクラスです。日本にはこの水準の先生はいません。占星術に限らず教師の能力の低さ、教育力の低さ(引き出す能力の弱さ)が日本国の弱点です。この弱点をなんとかしないと、陽はまた昇ることは困難でしょう。

 

 話しを占星術に戻して、両者の五つの違いについて、ここまで要領よくまとめることは日本人占星術師には無理です。実際できている人はいません。

 この5点は、モダンと伝統の違いであるとともに、ホロスコープ占星術の入門者が最低限認識しておかなければならないオリエンテイション5点です、モダン占星術を勉強するにしてもです。人類が獲得してきた知識の順に勉強することが勉強の一つのコツだからです。人類はまず伝統的占星術の知識を得てから、モダン占星術のそれを得てきたのです。

 ところが先発の伝統を無視して後発のモダンのみをやる。20世紀は、占星術大衆化の時代で、しかもこの歴史的勉強法(占星術の正統的な勉強法)を無視した五里霧中的な占星術ブームの時代でした。これが数々の悲喜劇を引き起こしてきました。

 人類はまず伝統的7天体を使ったホロスコピック占星術の経験知を約2000年蓄積してきました。天王星小惑星を使う占星術は、人類がそれ以後に獲得した経験知です。伝統的7天体のみを使う占星術を勉強することなしに、いきなりモダン占星術から入門するのは無謀です。このような夢物語り的な占星術勉強法では海王星の毒にやられてしまいます。

 

 前振りはこれくらいにして、世界トップクラスの占星術の教師である女史の提言を聞いて見ましょう。以下の5点は、女史の提言の当方の解釈です。女史の表現そのものではありません。

 

1 モダン サインーハウスの12の対応。おひつじ→第1ハウス、おうし→第2ハウス、・・

  伝統 そういう対応はない。サインとハウスは別論理の概念です。

2 モダン 十大天体&小惑星など

  伝統 勉強のためには肉眼で見える七つの天体のみを使う。

3 モダン みずがめのルーラは天王星、うおのルーラは海王星、・・

  伝統 ソーラーハーフとルナーハーフによる土星までの7天体による伝統的ルーラーシップ

4 モダン 何十もあるハウス分割方式。結局は人気で決める?

  伝統 ホールサインハウス 

5 伝統的占星術では天体のコンディションの評価を重視します。わかりやすい例では吉凶の評価です。第1に検討すべきはセクトです。

 天体のコンディションの評価について20世紀以降のモダンがどう考えているのかはっきりしません。全ての天体は相応に重要な平等主義?、吉凶を蔑ろにする(似非の)人道主義

 伝統では天体をレイティングするための評価項目は多すぎるほどあります。こればかりは一つ一つ勉強していくしかありません。しかし最初に検討すべき項目はセクトです。一般に、アスペクトの検討順位は低い。

 

 モダンと伝統の違いとして真っ先に1を挙げる日本人占星術師は珍しいのではないでしょうか。また5を挙げる日本人も多分珍しい。さすが本場の米国の先生と言わざるを得ません。モダンの海王星ぶり(幻想)をわかっています。2、3&4は占星術の常識です。ただ4を強力に打ち出したのは当ブログが日本初だと思います。もちろんホラリーでもホールサインハウスを使うべきです。こう言い切れないところが、モダンの祖のリリーに引きづられ勝ちな日本の弱さです。ホラリーに限れば英国でもそうなのですが。モダンの祖のリリー頼みの英国の問題点は以前指摘しました。

 

☆正統的なモダンの選択肢

 ジェームズ・ウイルソンがその有名な占星術の辞典を書いたのは1819年です。海王星発見以前であることが素晴らしい。これはモダンのネタ本一つとなりました。例えばサインと色の対応は、この辞典がネタ元です。業界トップの辞典と目されるデ・ヴォアの辞典は、ウイルソン説をそのまま踏襲していますし、2020年に邦訳が出たルイスのホラリー本もそうです。

 日本だけで?流行っている異端的なモダン占星術ではなく正統的なモダン占星術を勉強したければ、上記の5点をおさえた上で、ウイルソンの辞書から始めるのも一つの手です。リリーとは少し違う天体のコンディションの点数付けもあります。ただ英語本ですし図はありあません。残念。

 ウイルソンじゃ敷居が高すぎるなら別の選択肢は?

 モダン中のモダン、世界基準のバリバリのモダン占星術の代表的入門書は、例えばパーカー(Parkers’ astrology)です。入門書ながらミッドポイント、ハーモニクス、ホラリー 、リロケーション、相性に触れています。残念ながら邦訳されていません。またその見込みも低いでしょう、日本はあまりにも占星術後進国なので、そういう需要がない?。海外では標準的なモダン占星術ですら日本にはないということなのかもしれません。

 

  実質約400ページの大著です。ハウス分割方式はイコールハウスを採用しています。伝統色がほとんどないバリバリのモダンです。カーターのグリーンブックへの言及もあります。恒星についてはロブソン(Robson)を挙げています。ホラリー については、バークレイ女史とアンソニー・ルイスの名を特別に挙げています。邦訳が待たれます。21世紀中は無理かも?

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