長編三大傑作

 世界の三大喜劇王の一人、バスター・キートンは、1895年10月4日生まれです。

 

 中世イスラム占星術とはいささか趣を異にするモダン臭い占星術は15世紀後半からあります。しかしモダン占星術が本当のモダン占星術つまり海王星占星術となったのは1889年以後です。1889年頃に受胎したというべきか、そして本当のモダン占星術つまり伝統色が非常に薄い占星術が誕生したのが1895年です。というのはアレン・レオが関与した The Astrologer's Magazine が発刊されたのが1889年で、その雑誌の名前が「modern astrology」に改名されたのが1895年だからです。”名は体を表す”とはまさにこのためにあるようなアフォリズムです。伝統臭くない本当の?モダン占星術の誕生です。本当か偽物くさいかは観点によります。当ブログの立場では本当に胡散臭い占星術(←海王星占星術)の誕生、本物のモダン占星術の誕生ということになります。

 

 モダン占星術の立場では映画を海王星で象徴させることがありますけれど、1895年生まれのキートン映画芸術のために生まれたような存在です。

 

 サイレント映画時代のキートン主演の長編は全て相応の見どころがありますけれど、三大傑作を挙げるとすれば次の3本です。

 

 キートンの探偵学入門(Sherlock Jr.)、1924年

 コナン・ドイルは1930年没ですからこの映画の公開時は存命でした。1887-1927年に発表されたシャーロック・ホームズ物は大変な評判だったのでしょう。なおミステリ(mysteries)はモダン占星術的には海王星と月の関連です。

 この映画、キートンの最高傑作かもしれません。空前絶後の傑作と言えます。見ていないと表現の手段としての映画は語れません。未見なら本当にラッキーです。シュールな至高の傑作をはじめて観るという楽しみを味わえますから。

 

 キートン将軍(The General)、1926年。

 蒸気機関車将軍号のお話しです。鉄道オタクのキートンが「将軍は私のペットだった」と後に語ったほどのお金をかけた凝った大作。兵士役に州兵500人を雇って軍勢にリアリティを出すほどの力の入れようです。興行的に成功しなかったので呪われた大作と言えます。

 将軍ショックは次作の「キートンの大学生」にまで影響しています。「キートンの大学生」はキートンの長編のなかでは凡作です。「キートンの大学生」において、キートンは野球場で種々の競技を一人芸で演じています。確かにキートン一人で尺をとれば予算は少なくて済みます。

 将軍ショックからは結局回復できず、キートンはMGMに“身売り”することになりました。当時のMGMの3番目の高給取りとして契約したとのこと。後にキートンは、MGMと契約したことを「わが生涯最大の過ち」と回顧しています。

 さてこのキートン将軍、キートンの探偵学入門と並ぶキートンの二大傑作です。一発ギャグということでは、キートン将軍に軍配が上がります。この映画中にはコメディ映画史上最大級の一発ギャグがあります。

 その一発ギャグを決めた後のキートンの「the great stone face」が素晴らしい。キートン史上最大のドヤ顔を決めます。偉大なる無表情がウリのキートン、表情を変えるわけではないのですが、だれがどうみてもこれはドヤ顔でしょう。ドヤ顔を悟られまいとして懸命に無表情を作っているキートンの演技が素晴らしい。どうだ、これがコメディ映画史上最大の一発ギャクだ、そのことを観客に分かって欲しい、しかしそれを表情を変えて訴えるわけにはいかない、そうなるとあの偉大なる無表情になるのでしょう。

 

 キートンのカメラマン(The Cameraman)、1928年。

 キートン三大傑作の3本目はお好みでどうぞです。海底王キートンキートンのセブン・チャンスなど。荒武者キートンが好みの方もいらっしゃるかもしれません。悪夢感が強くシュールなのはキートンのセブン・チャンスです。しかし三大傑作となるとやはり「キートンのカメラマン」だと思います。これはMGMの制作ながらクレディットはされていないものの実質キートン監督作品です。キートン最後の傑作です。

 1928年前後のサイレント映画でこの映画以上の傑作はチャプリンの「街の灯」、1931年1月公開 ぐらいのものです。

 「キートンのカメラマン」でのコントは、ローワン・アトキンソン主演のTVシリーズMr. ビーン」にまで遺伝しています。アトキンソンがそのことを自覚していたかどうか不明ですが。

 またマルクス兄弟の「オペラは踊る」1935年公開 の船室でのドタバタシーンは「キートンのカメラマン」が原典です。日本語の Wikipedia の記事では要出典となっています。「オペラは踊る」船室のシーンがキートンのアイデアかどうかは不明ながら、「キートンのカメラマン」の更衣室でのシーンを質・量とも拡張し徹底して極めたのが「オペラは踊る」の船室でのシーンです。どっちがより面白いかと言えば、それは「オペラが踊る」のほうです。映画史上でも特筆すべきナンセンスの極みなシーンだと思います。

 

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