今年2023年の100年前の1923年、映画「荒武者キートン」が公開されました。以後バスター・キートンは1928年の「キートンのカメラマン」まで、表現の手段としてのサイレント映画の歴史に残る粒ぞろいの傑作を世に送り出すことになります。
しかしながら「荒武者キートン」について記述する前に、ロスコ―・アーバックルとアーバックル夫妻が飼っていた犬について記述します。
ロスコ―・アーバックルは、1910年代後半、映画界ではチャップリン並に人気があったコメディアンです。1917年、キートンに映画界入りをすすめたのはアーバックルであるとされています。またアーバックルは、キートンの兄貴分であり師匠でもありました。キートンはアーバックルの主演映画に脇役として14本ほど出演しました。アーバックルから独立してキートン自身の短編の主演作品を撮るようになったのは1920年からです。
短編時代のキートンの二大傑作はこれです。
1920年、「文化生活一週間」、One Week。キートン初の単独主演の作品。
この映画で使われているオチは古典的なオチで、以後このスタイルのオチは映画やテレビで多用されるようになります。ネタバレ禁止なのでこれ以上は言えません。キートンには鉄道オタクな面があり、大の列車好きです。「文化生活一週間」でも列車を登場させています。
「文化生活一週間」はキートンの短編では最高傑作かもしれません。しかしこの映画をもってキートンスタイルが確立したとは言えせん。
1922年.「キートンの警官騒動」、Cops。キートン作品の古典中の古典。
もし未見なら実に幸運です。これからはじめて見る愉しみを味わえます。
キートンがキートンスタイルを確立した作品。キートンは“大量”好き、多数好きです。この映画では大勢の警官が登場します。1925年の「キートンのセブン・チャンス(seven chances)」では大勢の花嫁が出てきます。また大量の“岩石”も登場します。同じく1925年の「キートンのゴー・ウェスト」では多数の牛が登場します。「キートンのゴー・ウェスト(Go West)」はキートンの長編のなかでは平均的な出来栄えなのですけれど、多数の牛が出てきてからの映像表現は圧巻です、キートン作品ならではです。1928年の「キートンの蒸気船(Steamboat Bill, Jr.)」では、“大量の風”がテーマです。“大量”好きのキートンの原点が「警官騒動」です。
キートンの短編時代の作品をもう一本あげるとすれば、何でしょう。上記の2本は世界の古典で、さすがにそのレベルの作品はありません。しかしもう一本あげるとすれば、1920年の「キートンの案山子(The Scarecrow)」でしょう。
どうしてかというと、当時のスター犬、 Luke the Dog (1913–1926) が出演しているからです。三大喜劇王の一人キートンと Luke the Dog 、夢の共演!?
Luke the Dog(以後ルーク) を日本語の web 記事として取り上げるのは当ブログが多分初です。
上述のアーバックルには、女優の奥さんがいました。ミンタ・ダーフィ(Minta Durfee)です。そのダーフィが飼っていた犬がルークです。
ルークの雄姿は、動画投稿サイトで視聴できます。当然にアーバックルも出ています。
Luke the Dog - Dog on the Piano - YouTube
Luke the Dog - Aw You Dog! - YouTube
「キートンの案山子」に出演した一人と一匹だけを feature(フィーチャ)したビデオクリップもあります。
Buster Keaton - Mad dog (The Scarecrow 1920) - YouTube
ルークは1913年の11月生まれです。1913年10月29日23:29JSTごろの新月はさそり5度です。
犬を象徴する天体は何か、諸説紛々です。太陽、木星でないことはほぼ確かですが、その他の天体は、金星ですら、犬を象徴し得ます。ルークの場合、そのキャラクターからして火星です。
火星かに19度 △ 新月さそり5度
この火星はフォールですけれど、リセプションかついわゆるミュウチャルリセプションです。19度は魔の度数だとの説がありますけれど一理あります。ルークは、「キートンの案山子」では”狂”犬の役を好演しています。
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