我らの歓待

 バスター・キートン長編映画第二作目、「荒武者キートン」、”Our Hospitality”。1923年11月19日、米国公開。

 筆者がみた映画のなかで、占星術的に最も意義深い映画が「荒武者キートン」です。クルドの英雄サラディンが登場する映画「キングダム・オブ・ヘブン」、2005年公開、は見ていません。こちらのほうがより占星術的に意義深い作品なのかもしれません。しかしながら「キングダム・オブ・ヘブン」は未見なので、ここでは「荒武者キートン」について語ります。

 

 キャンフィールド家とマッケイ家は、伝統的に強固に反目しあっていました。どのくらい反目しあっていたかというと、両家の男子が出くわすと、喧嘩上等、殺される前に殺せ、というほど、です。

 マッケイ家最後の生き残りがウィリー・マッケイで、それを演じるのがバスター・キートンです。一方、キャンフィールド家で生き残っているのは、一家のあるじ(当主)である親父と、その息子二人、娘一人です。マッケイ家を根絶やしにするという血の掟は、二人の息子に受け継がれており、この兄弟はマッケイ家の人間を見つけ次第殺す気満々です。

 そのキートンがキャンフィールド家の一人娘と恋仲になり、その娘の招きでキャンフィールド低にやってきたらどうなる?、というストーリーです。マレフィックが管理する第8ハウス(恐怖の家)に、天体(たとえば月や水星、あるいはASCのルーラ)がやってきたらどうなる、このような卦を解釈した映画です。この映画においては、第8ハウスは多分おひつじサインなのでありましょう。邦題が荒武者キートンなので。荒武者的なサインは当然におひつじです。

 「荒武者キートン」の英語のタイトルは”Our Hospitality”です。”Our Hospitality”は、南部の歓待(Southern hospitality)のことです。サザン・ホスピタリティは、日本語のwikipedia の記事になっているくらいですから米国南部では伝統的な風習です。

 マッケイ家の男子がキャンフィールド邸にいることを知ったキャンフィールド兄弟は当然にキートンを射殺しようとします。しかしそれを見た親父(キャンフィールド家当主)は、兄弟を止めます。”Our Hospitality”のゆえにです。ゲストは歓待しなければなりません。必殺の家の掟を放棄するわけではありません、南部のプライド高き伝統のゆえに邸内にいる招待客は殺せないというわけです。そこで兄弟二人は、キートンを何とかして邸宅から追い出そうとします。自分がいる屋敷がキャンフィールド家だと知ったキートンは、追い出されて殺されてなるかと、何とかして屋敷内にとどまろうとします、・・・その結末は見てのお楽しみ。

 伝統的占星術でいうところのリセプション(reception)があるなら、必殺人的なマレフィックであっても、自分が管理するハウスに滞在する者を保護します。そのことを楽しみながら学べるのが「荒武者キートン」です。占星術愛好家必見の映画です。

 

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