マレフィックス

☆”害悪”星(凶星)

 伝統的占星術では火星と土星がマレフィックスです。「マレフィセント」なる映画がありましたからマレフィックは既に日本語化していると言えましょう。両者はほぼ同じ意味でマレフィセントの方が古風な感じがします、実際どうなのかはわかりません。

 マレフィックは悪くなりっぱなしではないものの苦難をもたらします。特に火星 合 土星となると、それが顕著です。いわゆる不幸のてんこ盛り。苦難の程度は例によってセクトとアングル次第です。マレフィックスがないと、ベネフィックスもなくなってしまう、その甘美さもわかりにくい。人は吉祥を意識できないかもしれません。

 

☆ドミサイルとイグザルテッド

 火星は、おひつじとさそりを管理し、やぎで高揚となります。

 占星術的一年はおひつじから始まります。人類は苦労するようにできています。世界史は悲惨、残虐、殺戮、流血の歴史です。人類の歴史は戦争の歴史でもあります。火星が軍神であることは占星術を知らなくても世界の常識だと思います。

 さそりは悪名高き呪われたサインです。一方でさそり座の女、これは厳密にはさそりサインの女であるべき、なる歌謡曲がヒットしたりします。ここまでの有名歌になり得るのはさそりサインだけです。ふたごサインの女では無理です。

 火星が高揚となるやぎは建設的サインであり、マレフィックの火星なしでは人類は人類たり得ません。建設と破壊は人類の宿命。

 やぎは骨を象徴します。映画2001年宇宙の旅で、猿人がはじめて手にした武器は骨でした。勝ち誇った猿人がその骨を空高く放り投げると、つまり高揚させると、これは見てのお楽しみ。キューブリック占星術を知っていたのでしょうか。というより、どうしてもそうなってしまう、占星術の法則は地上に降り注ぎます、天地が消え失せるまで。

 では厄介者の土星はどうでしょう?

 土星は、やぎとみずがめを管理します。モダンではみずがめを重視しますけれど、みずがめは実は死のサインです。やぎとみずがめはライツが管理するサインの対極であり、冷えや死を示唆します。実際北半球では太陽やぎ&みずがめは厳寒期です。とはいえ土星の最良サインはみずがめです。みずがめはモダンを予兆します。やぎは伝統派の牙城です。

 史上最大級の占星術師、Abu Ma’shar、アブマシャー(アブ・マーシャル)の誕生図は次のような特徴があります。

 n土星Rはみずがめサインかうおサインです。多分みずがめが正しい。n木星Rはやぎサインです。アブマシャーの誕生図では、水星(占星術)、木星土星が逆行しています。これは、師匠の諭しにより反占星術から占星術に転向したことを示唆しているようです。

 

☆ASCサインししの二人、モダンのゴークランと伝統のシュミット

  以前当ブログで取り上げたロバート・シュミットは、太陽、金星&水星がやぎです。興味深いのは、火星とDSC(他者)がモダンのみずがめであることです。この場合の他者は、ミシェル・ゴークラン(1928-1991)です。当然のことながらゴークランはやぎサインには天体はありません。この二人はASCししです。

 1989年38歳てんびんサインの年に、シュミットは、とあるカンファレンスでゴークランと出合って占星術の研究を開始しました。ゴークランのMCおうし0度 △ シュミットの太陽やぎ0度。

 てんびんサインの対向のサインはおひつじなので、その年の他者はn火星が象徴します。シュミットの誕生図のn火星は第7ハウスです。正統的な伝統占星術で使うハウス方式はホールサインハウス (全体サインハウス )方式であることに留意しましょう。このように鮮やかに標示が出るのは全体サインならではです。

 

☆リリー以来の逸材?

 シュミットの弟子、1984年生まれのクリス・ブレナンは、ASCがみずがめであり、やぎに火星と木星がいます。シュミットの誕生図ではモダンのみずがめにいた火星は、30年以上の運行を経てブレナンが生まれた時にはやぎに位置していました。モダンから伝統へを象徴します。n木星はMCルーラです。いてからみずがめの間に天体が集まっています。ハウスでは10から1の間です。卓越した資質を示唆します。

 ASCルーラの土星さそりと火星やぎは、いわゆるミュウチャルリセプション です。才能の塊のようなチャートです。ちなみにリリーはn土星さそり18度で、ブレナンはn土星さそり17度です。リリーはおうし強調の生年月日なのに対し、ブレナンは、その対向のさそり強調の生年月日です。おうしを管理するリリーのn金星は、巡り巡って運行して、ブレナンの誕生の時には、いてサインを運行していました。ブレナンの誕生図の占星術のハウスはてんびんであり、そのルーラn金星は、希望の第11ハウスにてMCにアドヴァンシングしています。チャート的にはやはりリリー以来の逸材なのでしょう。

 

マリア・カラス

 20世紀最高のソプラノ歌手マリア・カラスは生まれ時刻不明です。しかしn土星 合 n火星てんびん←n金星やぎは間違いありません。ミュウチャルリセプション でありオーヴァーカミングです。土星はてんびんで高揚でもあります。世紀の歌姫になるかどうかはアングル次第です。マレフィックスは甘くありませんから壮絶な人生だったようです。53歳で死去、毒殺説が出るのはn火星てんびん29度のゆえなのでしょう。火星は毒物や疫病を象徴します。

 

こまどり姉妹

 一斉を風靡したような歌手は火星と土星が目立ちます。美空ひばりは、火星が管理するサインに3天体、土星が管理するサインに2天体があります。

 しかし日本で火星合土星の代表的歌手はこまどり姉妹です。不幸のてんこ盛り的人生です。しかし n火星 合 n土星おひつじ なしにあの唄”味”はあり得ません。彼女らは歌唱力にやや難があるのですけれど、流しで鍛えた節回しは天下一品です。例えば「未練ごころ」や「女の恋」。火星 合 土星を象徴するに相応しい歌詞と節回しです。

 1960年代の人気歌手だった双子のこまどり姉妹は、みずがめとおひつじに6天体が集中しています。ところがn月はおとめです。他の6天体とはアヴァージョンです。極貧の少女時代、歌は生活のための手段、歌が好きなわけじゃなかった、特に姉の方は歌を嫌っていました。まさに月がアヴァージョン(嫌悪)。

 

 

火星の赤と土星の黒

Callas: La Divina

Callas: La Divina

  • 発売日: 1993/03/09
  • メディア: CD
 

 end