Ages of man (1)

☆タイムロード(time lords)
 占星術の予測テクニックで基礎となるのがタイムロードです。タイムロードシステムは20種類以上あります。有名なのがペルシア占星術のフィルダリア、インド占星術のダシャーです。史家のホールデンによると古代ローマ帝国時代に多用されていたのがプロフェクションとデシニエルズです。当店ピカトリクスではタイムロードシステムを5層に階層分けしていて、デシニエルズはその中間層(第3層)に分類しています。タイムロードらしいタイムロード、それがデシニエルズです。
 1990年代以降、西洋占星術の伝統派が多用してきたのがフィルダリアでしょう。2020年に他界したロバート・ゾラーの功績の一つがフィルダリアです。もっともゾラー推奨の方法にはおそらく誤りがあり、いまだにその誤りが各所に散って残っているという問題があります。端的にいえばロバート・ハンドが推している方法が正しい。とはいえゾラーのテクニックはつい最近まで伝統的占星術業界標準でした。
 ここではタイムロードの一例として Ages of manを取り上げます。プトレマイオス起源の由緒あるタイムロードを論じるのは日本では初となるからです。世界的にも珍しいかもしれません。使えるテクニックとして記事(生地?)にするのは多分世界初です。正統占星術を看板に掲げる以上、無視できないタイムロードが ages of man です。これを無視している占星術(師)は正統度に疑問がつきます。正統的な伝統的占星術の大家の一人であるアブ・マシャーは当然 ages of man を取り上げています。
 これは性別を問わないテクニックなので Ages of person と言うほうが適切かもしれません。しかしここは ages of man、略してAOMと言います。AOMはタイムロードシステムのヒエラルキー(階層)からすると最下層(第1層)のテクニックです。では使えないかというとそうではありません。AOMは最も低コストのタイムロードシステムです。占星術のテクニックというのはコストも重要です。占星術の予測テクニックで最も重要なのは、その名前が示唆する通りプライマリーディレクションです。しかしこれはコストが高すぎる、最高級品です。当ブログや初級者が手を出せる”価格”ではありません。
AOMは無料同然なので気軽に使えます。もっともその性能は価格なりですが。しかしプロフェクションなどと組み合わせれば結構使えます。
AOMの各天体の年齢域は以下の通りです。
 月   0- 3
 水星  4-13
 金星 14-21
 太陽 22-40
 火星 41-55
 木星 56-67
 土星 68-97

 モダン占星術にもこのシステムはありますけれど問題があります。加齢(土星)のような目に見える無慈悲な土星的現象について、肉眼ではほぼ見えない天体を使うのは非占星術的な思い付きです。肉眼では見えない天体の影響はあるかもしれませんけれど、人生の各時代を象徴する天体とするのは不適切です。またプラネタリーイアーズを使えるのは伝統的7天体のみです。プラネタリーイアーズなしのAOMはあり得ません。
 AOMの年数の配分は実によくできた割り当てです。老いた土星から幼い月までの順序はカルディアンオーダーです。
 月と水星以外は、マイナープラネタリーイアーズの年数になっています。実に見事です。水星のマイナープラネタリーイアーズは20年です。AOMでの10年というのはその半分ということでしょう。子ども時代が20年は長すぎます。ゆえに10年でokです。こういう操作がokなのが占星術の面白いところです。では月の4年は?
 これは根拠不明です。月のマイナープラネタリーイアーズは25年です。こういう謎があるのが伝統的占星術の不思議なところです。
 現代では98歳以上生きる人も結構います。その場合は月に戻します。98歳から101歳は月の時代になります。それが4年に関係しているのか、それとも胎児の時代を考慮してなのか、わかりません。あるいは108年×(1/27)ということなのか。月のグレーターイアーズは108年なので。27というのは27宿?

☆実例
 当ブログでは、金星の象意(ミュージカルコメディ)を最も体現する人物として人気トップ3の映画女優を選定しました。
 ここではベティ・グレイブルを取り上げます。占星術的な観点からは重要な女優です。その誕生図のRodden rating はAAです。ASCはししの29度です。これはトランプ大統領のASCと同じ度数です。グレイブルが生まれた1916年は、恒星レグルスの位置はしし28度でした。トランプ大統領が生まれた1946年にはレグルスはしし29度にありました。レグルスは、t土星がレグルスに合したときにビスマルクが失脚したことで有名な恒星です。
 グレイブルのASCはししですから、その第8ハウスのサインはうおです。すなわち木星Rおひつじ第9ハウスが死の王です。グレイブルは56歳で亡くなりました。これは木星時代の第1年目のことです。56歳のプロフェクションサインはおひつじです。ロードオブザイアー(the lord of the year, 略してLOY)の火星と死の王である木星Rがテーマの年です。 
 56歳の死のサインはさそり、さそりを管理する天体はLOYの火星やぎです。
 火星やぎ □のオーヴァーカミング 木星Rおひつじ
 セクトライトの月てんびん オポ 木星Rおひつじ。オポは分離のアスペクトです。
 ASCルーラ太陽いて △のオーヴァーカミング 木星Rおひつじ
 太陽も木星セクト外です。凶事が起きないとは言えません。

☆オーヴァーカミング
 オーヴァーカミング(overcoming)は日本語環境では今まで秘密のテクニックでした。しかし英語環境ではそれほど珍しくないテクニックであり、2020年刊の日本語の書籍で公開されたコンセプト&テクニックなので、これからは遠慮なく使うことにします。これなしでアスペクトを読むことは困難だからです。

 オーヴァーカミングはドロセウス以来の由緒あるテクニックです。正統的な占星術をやりたいなら伝統モダンを問わず、外せないテクニックです。オーヴァーカミングは、上から目線の圧迫という感じの右サイドからの□、△or*のアスペクトです。ただし*は弱い。△は弱くないけれどサヴァイヴァル的には重要度は一段落ちます。オーヴァーカミングがオーヴァーカミングらしいのは□です。ときに破壊的な影響をもたらしますから要警戒です。
 グレイブルのチャートでは土星が病気を象徴します。夜チャートですから土星は最悪の天体です。セクト的にもこの土星は最悪です。その土星Rはかにサイン第12ハウスです。肺はふたごサインとかにサインが象徴します。n土星Rはかにサインにあり、死去時のt土星はふたごサインです。死因は肺ガンでした。
 偶然?ですけれど、死去時、t土星ふたご26度 オポ n太陽いて26度でした。
 下記のチャートではt火星の位置は示されていません。死去時のt火星はおひつじ7度です。不思議にもt火星は56歳のサインにいます。t火星はn土星Rを□でオーヴァーカムしています。t火星はLOYであることに留意です。LOYのトランジットは無視できません。
 n火星やぎは病気のハウスにインし

www.astro.com

ている天体ですから、t火星おひつじは病気のハウスの出身であることになります。偶然?にしてはよくできています。

 グレイブルの誕生図と死去時のトランジット
https://www.astro.com/cgi/chart.cgi?wgid=wgeJwljs1qwzAQhJ-m0MIGtPKf3GUvJRAIKT2E0LNcq7ZopARLrtDbV3UOywzD7s6X7I9lSZNjjeRHPix6uBp4MzFm-AZUgBKwxxYkvtYC5jbBpAMIOGvr45MUp9tqA7x_FPt8Ob9AL1I5qZSvFKzQtAp2sqmFAEFh1JmFpOBunkVHIS-MfVdNpMfBa2d46y2fHhj_8aijYVQl25sv4wazFLsBFU02zkXMr9lQZJnjes3bRlfREPOdZd2QizPrmGgOmXdIS2D8PPwBIvBKMg

 

 

 日本語への翻訳が待たれます。学者であった Robbins 訳がスタンダードとされているようですが占星術師であった ashmand 訳のほうが少しは読みやすいと思います。

Tetrabiblos

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