タイムロード(decenniels)

 伝統的占星術 OR 伝統占星術 タイムロード OR タイム・ロード

 このワードで検索すると当ブログがトップに来るようです。検索日は2021年12月26日です。

 タイムロードなる用語を日本に導入したのは当ブログではありません。しかし、その重要性を明確にし使える実践例を公開したのは当ブログが本邦初です。当店ピカトリクスは“タイムロード屋”と言えるでしょう。タイムロード(にもとづく知恵)を売るのが仕事です。タイムロードのコンセプトなしに、いわゆるネイタル占星術をやるのは無謀です。心理占星術やるにしてもタイムロードはあったほうが好ましい。

 クロノクレータないしクロノクレーターの適切な現代的用語がタイムロードであることを指摘したのも当ブログが本邦初です。モダンの用語を使うならクロノクレータはタイムルーラないし ruler of time です。

 日本ではクロノクレータを年齢域と訳すみたいですが、これはあまり適切とは言えません。クロノクレータはタイムルーラなのです。これを年齢域と訳したので日本の占星術の学徒は混乱します。

 

 論より証拠?、クロノクレータがタイムロードであることのシンプルなエビデンスを示します。

 クリス・ブレナンは、その著書 Hellenistic astrology の616ページで time-lord は chronokrator としています。さすがブレナン、分かっているじゃないですか。クロノクレータ=タイムロードなのです。

 

 海外でもクロノクレータが ages of man と認識されていた時代はありました。なぜこんなことになってしまったのでしょう?

 その歴史的真相は不明です。しかし多分ジェームズ・ウィルソン(James Wilson)とデ・ヴォア(Nicholas DeVore)のせいです。

 ウイルソンはモダン占星術のネタ元の一つです。19世紀前半の最も重要な占星術師です。彼がその有名な占星術辞典(dictionary)を書いたのは1819年です。これはデヴォアの占星術事典(1947年)に大きな影響を与えました。

 ウイルソンの辞典によれば、chronocrater = ruler of time です。さすがモダンの祖の一人ウイルソン、クロノクレータがタイムルーラ(伝統的な言葉ではタイムロード)であることまでは分かっていました。曰く、太陽が昼のクロノクレータ、月が夜のクロノクレータ、これはまあいいでしょう。太陽が昼の ruler、月が夜のruler であることは間違いではありません。ところがその後の説明が、、、、その後の世代の混乱の元になりました。

 太陽と月の記述の後はプトレマイオスの ages of man の紹介になっています。 Ages of man がタイムロードの一種であることは確かです。しかしウイルソンはこれしか挙げていないので、またほかのタイムロードシステムをウイルソンは知らなったので、後学者はクロノクレータ= ages of man みたいな理解になってしまいました。

 デ・ヴォアのほうはどうでしょうか。

 Chronocrators = makers of time としています。ん?、maker(s) でもlord でも ruler でも何でも良い?

 デヴォアは makers of time には二種類あるとして、その(1)では、約二ページに渡って天文学的なサイクルについて記述しています。結構な紙幅の割き方です。サイクルの例として木星土星の大会合などを挙げています。2021年に業界的には結構話題となったこの大会合は約20年周期です。周期的な期間を作るもの、makers of time、タイムロードです。こういう理解の仕方も”あり”なのかもしれません。しかし、デ・ヴォアのこの解釈(新釈?)は普及しませんでした。今日クロノクレータをこういう意味でとらえる者は多分いないでしょう。

 ではデヴォアの(2)の解説文は?

 その解説文はたった二行です。多分、デヴォアは、(2)は不適切な理解の仕方だと思っていたのでしょう。占星術界の多くの者はクロノクレータを(2)の意味だと思っているが適切ではないと。(2) Chronocrators = the rulers of the seven ages of man。

 

 タイムロードには実に多数のシステムがありますけれど、代表的なのは、プロフェクション、デシニエルズ、フィルダリア&ディストリビューションなどです。ウイルソンにしてもデヴォアにしても数あるタイムロードシステムのうち、ages of man しか挙げていません。モダン占星術ではタイムロードシステムは事実上失われてしまったと言わざるを得ません。

 伝統的占星術再構築開始直前の1985年の Fred Gettings の占星術辞典ではどうでしょうか。

 ゲッティングズは、一般論として chronocrators = rulers of time としています。これ自体は ok です。makers よりは rulers のほうが適切な用語です。

 ゲッティングズは、クロノクレータの特段的適用(in specific application)として木星土星の大会合を挙げています。

 さらにゲッティングズは、 あらゆる天体に makers of time の能力を認める解釈は不幸にも混乱をもたらしたとしています。しかしながら伝統的にはクロノクレータは seven ages のことだとして天体が管理する期間を表にまで示しています。ゲッティングズはクロノクレータは複数あることは理解しています。しかしプトレマイオスの seven ages 以外は挙げていません。網羅性を要求される辞書を書くにもかかわらず知らないのだから挙げようがなかったということでしょう。

 

 19世紀後半以後のモダン占星術海王星占星術です。現代人は海王星(“妖怪”)の影響を完全に排除することは困難です。しかしその好ましからざる影響を小さくすることはできます。それは伝統的クロノクレータ=タイムロードを使うことです。伝統的クロノクレータは海王星を使いません。いたずらに海王星を刺激しなくてすみます。

 さて、ここで朗報です。タイムロード中のタイムロード、最もタイムロードらしいタイムロード、日本では当店のみが強力に推しているデシニエルズが web で計算できるようになりました。astroseekのこのページです。

 

Decennials - Traditional Astrology - Online Calculator Software | Astro-Seek.com

 

 厳密にいえばデシニエルズを使うにはチャートを読む必要があります。スタート天体を何にするかです。しかし昼チャートなら太陽、夜チャートなら月、これを第1番目のタイムルーラ(スタート天体)としても ok です。こうしても恐らくフィルダリアよりは当たるはずです。フィルダリは昼夜の別以外は万人共通の低コストのタイムロードシステムなのに対して、デシニエルズは、ほぼ生年月日ごとのタイムロードシステムだからです。スタート天体の選び方によっては個々のチャートごとのタイムロードシステムになるかもしれません。

 なお、オプションでスタート天体を選べるようになっていますから、過去に起きたイヴェントをチェックすれば、最適なスタート天体を選べるかもしれません。

 便利な時代になったものです。

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