伝統的占星術の準基本書

☆中世のテクニックに基づく伝統的占星術の基本書
 伝統的占星術のネイタルの基本書と呼べるほどのものは英語でも少ない。次の2冊ぐらいでしょうか
 先日紹介したITA
 On the heavenly spheres

 ITAはネイタル限定というわけではありません。ネイタルとホラリーをほぼ区別していません。チャートの読み方の原則は似たようなものなので。しかしこれだけではチャートは読めるようになりません?
 いわゆる教則本としてはOn the heavenly spheres のほうが優れています。しかし、この本の泣き所は、チャートの読み方の記述がほとんどないこと、全体サイン方式を推していないこと、索引がないことの3点です。とはいえ索引があるITAよりも読者フレンドリーです。また伝統的占星術の入門書としてはもちろん、モダン占星術の入門書としても優れています。2020年秋にパーカーの新版、Parkers’ astrologyが出るようです。それまではOn the heavenly spheres が業界トップの西洋占星術の入門書かつ基本書です、モダン占星術であってもです。パーカー本はかのデボラ・ホールディングさんが初めて実占で使った本です。いわゆるロングセラー。今度の新版がOn the heavenly spheresをしのげるか見ものです。
 ちなみに当ブログではミュウチャルディスポジションという用語を使うことがあります。これはOn the heavenly spheresの影響です。

☆「基礎からわかる伝統的占星術
 この本、購入しました。4月9日(木)に届いたのでざっと目を通しました。雑感を記します。
 準基本書的な本です。全体的に副読本的な記述が多いので基本書とまでは言えません。しかし日本語の伝統的占星術の書籍の中では最も基本書度が高いです。本邦初公開のテクニックもいくつか取り上げています。さらに重要なのは、チャートの読み方の順番を9項目挙げていることです。誕生図の読み方をまがりなりにもリストアップしたのは、当ブログにつぐ快挙です。読み方の実際の記述は当ブログよりもフレンドリーです。フリーの当ブログよりは丁寧で詳しいのは一安心です。というのは書籍中で、ここまで読み方を披露しているのは英語の本でもありません。有料の本なのに肝心のチャートの読み方があまり載っていないのはどういうことか(?)、もちろん業界の事情があります。
 もっともこの本、初級者が理解できるかどうかは不明ですが。100%理解できないまでも、これが難しすぎると感じるなら占星術に向いていません。これ以上やさしく説明しようとするのは多分無理です。無理にやるとモダン占星術になってしまいます。本来の占星術の難しい部分を切って捨てて大衆化したのがモダン占星術です。大きく構えて言えば、です。もっとも海王星力がないとモダンは伝統よりも難しいですが。
 モダンは、ことテクニックにおいては、9人ではなく4、5人でやる草野球みたいなものです。草野球でも楽しいですから、甲子園を目指す必要などはありません。目指してもokですけれど地方予選の二回戦敗退ということになるのかもしれません。野球をやる以上、心意気だけでも甲子園を目指したいですけれど、それは価値観の相違です。草野球派(モダン占星術愛好家)が大勢いても不思議ではありません。むしろ草野球を楽しんでいる人のほうが人数的には多いのかもしれません。余談はさておき、
 「基礎からわかる伝統的占星術」で驚いたというか、ついにというか、オーヴァーカミング関連の技術が紹介されています。当ブログでも、このテクニックを示唆はしていたのですけれどテクニックの名称は伏せていました。いわば秘伝のテクニックだからです。
 伝統的占星術はテクニックがやたら多い、うんざりするほどあります。なかには当たらないものも多いのでしょう。それらのうち何が使える秘伝的テクニックかわかるなら自学自習が可能なのでしょう。オーヴァーカミングがとうとう日本語で公開されてしまったので、当ブログでも今後このテクニックは多用することになると思います。オーヴァーカミングは1世紀来の由緒ある正統的なテクニックであるにも関わらず、最近まで無視されていたテクニックです。伝統的占星術のテクニック中でも屈指の切れ味を誇るテクニックです。従来、高額のコースやゼミナールを受けないと入手できなかったテクニックが日本語の本に書いてあるのですから初級者には有難い、滅多にないことです。
 正統占星術的にはもう少しセクトを強調し、恒星よりもロッツを重視して欲しいところです。しかし挙がっている9項目のチャートの読み方を忠実にやれば初級レベルのチャート読みは誰でも可能です。伝統的占星術の文献にチャートの読み方が書いてあることは稀です。シーケンシャルに詳しくということになると皆無です。今まで見たことがありません。実際過去の大家がどうやって占っていたのか不明です。ホラリーながらリリーが空前絶後なのは実例に基づくチャートの読み方を披露しているからです。
 「基礎からわかる伝統的占星術」には誕生図のケーススタディが5件載っています。初心者には難解だと思いますが、熟読する価値、チャレンジする価値があります。
 それにしてもこの本の著者は前著(伝統的占星術 第二巻)において、気質計算の重要性を力説していたのに、この本では全く出てきません。説明済みということなのか、読者または編集者から気質計算は難しすぎるというクレイムでもあったのだろうか。本格的気質計算は非常に面倒な手続きが必要なので、初級者は天体のエレメント程度の知識でokということなのかもしれない。この本にも天体のhot & dryの区別は載っています。

 

  いわゆる the first astrology book。サンサイン占星術、太陽占星術ではない占星術は甘くありません。土星力が必要です。書籍では本邦初公開のテクニックを含んでいますから占星術やる以上必読かもしれません。

基礎からわかる伝統的占星術

基礎からわかる伝統的占星術

  • 作者:福本 基
  • 発売日: 2020/04/05
  • メディア: 単行本
 

 

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