国民主権な占星術

 前回のブログで「春分直前の新月または満月をチェックするのが常套手段」と書きました。このテクニックの有効性を一つ実験してみます。日本国史上最大級の災害は1923年の関東大震災です。占星術というのは“トップ総取り”の傾向が強い占術です。本来、王(←トップ)のための占術ですから。

 現代の日本では、一応主権は国民にあるとされていますから、現代の占星術は、伝統的なものであっても国民のための占星術であるべきなのでしょう、当ブログはそのつもりで書いています。

 

 マンデン占星術において最も基本となるチャートはいわゆる春分図、おひつじサインへのt太陽のイングレス図です。これは一年の誕生図に相当するようなチャートとなります。しかしながらプトレマイオスが指摘しているように年度代表の新月図または満月図も重要です。

 従来、日本では、このプトレマイオスの指摘を無視し続けてきました。春分図と新月図、どちらが重要か、あるいは、両図をどう総合させるのか、これは業界的に未解決の問題です。

 事件事故や災害をより適当に象徴するのは新月図のほうであろうと、筆者は考えています。今回は一つの“実験例”を挙げます。

 

 まずは1923年の東京春分図。

http://www.horoscope-tarot.net/horo/s/f72ca4a442de473db06f7bc4bf2e2934.html

 

 ヴァイアコンバスタにある最悪天体の土星てんびんがMCにアドヴァンシングではあります。しかしマレフィックがアングルにピタリと合というような「いかにも」な凶相があるわけではありません。

 

 いわゆる西洋占星術におけるマンデン占星術(ユニヴァーサル占星術)の元祖はプトレマイオスです。プトレマイオス占星術師ではなかったようです。そのゆえなのか、プトレマイオス占星術(テトラビブロス)はユニークです。正統的ではなかったとも言えます。プトレマイオス占星術は、謎の占星術と言える面もあります。プトレマイオスは先達の占星術師の名を挙げておらず、テトラビブロスの情報源は謎なのです。アレクサンドリア図書館がその情報源だと推理できますけれど、アレクサンドリア図書館は焼失してしまったので、それは永遠の謎です。

 ユニークさが目立つプトレマイオスですけれど、そのなかでもユニーク過ぎるのが、マンデン占星術です。西洋占星術のマンデン占星術の元祖は事実上プトレマイオスです。

 マンデン占星術において、春分直前の新月もしくは満月に注目するテクニックは、恐らくプトレマイオスが起源です。プトレマイオスは明言していませんけれど、このテクニックは多分ネイタル占星術から借用したものなのでしょう。出生前の新月または満月に注目するのは、ネイタル占星術においては一般的なテクニックです。上述したように、春分図というのは一種の“誕生図”なのです。

 

 では物は試し、1923年の春分直前の新月をみてみましょう。チャート作成地点は東京です。

 

http://www.horoscope-tarot.net/horo/s/1a044d15eca3cb4006368ba4efb8ba1e.html

 

 春分図とは異なり木星がASCにピタリと合です。この木星は最良天体ではなく逆行もしているので、凶事が起きないとまでは言えません。

 この新月金環日食でもありました。分点や至点の直前の新月もしくは満月が蝕(食)であった場合、重視せよ、この教えもプトレマイオス起源です。

 日本のような地震超大国では蝕をみたら、まず地震を疑え、です。いわゆる宮廷占星術師なら当然にそうするでしょう。現代は宮廷占星術師の時代ではありません、国民主権の時代です。微力ながら一国民である筆者は何度も当ブログで訴えているわけです。

 ICルーラにして最悪天体の土星がヴァイアコンバスタ(←燃焼を示唆)で、てんびん18度第12ハウスです。当然に第12ハウスは災害関連のハウスです。第12ハウスは見えない敵のハウスであり不意打ちを示唆します。

 また土星はイグザルテイションですから、歴史に残る有名な事件を示唆します。これが占星術の象徴の興味深いところで、てんびんサインの土星はイグザルテイションであることを止めません。イグザルテイションの代表的な現れ方は、「高名さ」です。

 ASCと合の木星はさそり18度です。このあたりが度数の不思議なところです。木星土星はアヴァーションです。この事実は変更不可能です。一方で同じ度数であることも事実で、これも確実に作用します。同じ度数は引き合います。さらに木星はさそり18度で、これは特徴的な“魔”の度数です。一般にさそり19度を最悪とする説がありますけれど、正しくはさそり18度です。

 千年に一人のホラリー占星術師リリーは、n土星がさそり18度でした。リリーのさそりは第9ハウスですから、リリーは“魔”(力を持つとしか言いようがないほど)のホラリー占星術師でした。

 この新月図では木星がさそり18度でASCとタイトな合ですから千年に一度の事件が起きる可能性があります。実際に起きるかどうかは度数だけでは決まりません。度数そのものには、そこまでの力はありません。

 ASCルーラの火星はDSCのデクライン側いわゆるケイデント側にいます。手遅れを示唆します。起きてからの事後策に注力するのが現実的と示唆する卦です。

 てんびんの土星とおうしの火星はアヴァージョンですけれど、両者は無縁の存在ではありません。両サインとも金星が管理するからです。これはリセプションではありませんけれど、同じ天体が管理するサインにいる天体同士はリセプション的に機能します。すなわち二つの“凶星”は、(いやいやながらも?)お互いを受け入れます。つまり社会を揺るがすような大事件を示唆します。もちろん、アヴァーションなので、これだけでは起きない可能性のほうが高い。

 てんびんとおうしを管理する金星は、みずがめ第4ハウス(←大地のハウス)にいます。この金星は、土星も火星も見ています。

 火星も土星も金星もアングルのルーラですから、よほど特殊な事情がない限り、何事か起きます。どのレベルの歴史的な事件が起きるかは、このチャートだけで予測するのは困難です。事後の「実は・・・」的な話しが必要です。

 関東大震災が起きたときのt太陽はおとめ7度でした。t太陽のおとめサインへのイングレス直前の新月が「鍵」のチャートとなります。

 「実は」、1923年8月12日、t太陽のおとめイングレスの直前の新月は、ししサインの18度第6ハウスで起きました。ここでも“魔”の18度が登場しています。そして、ししサインには金星も火星も入っています。また第6ハウスは不運のハウスです。

http://www.horoscope-tarot.net/horo/s/8412d33e4dbff9dd5ca9a88c388037b5.html

 

 弱り目に祟り目、泣きっ面に蜂、こういうアフォリズムがあるように、良くないことは重なりやすいものです。

 1923年では、最凶の恒星アルゴルはおうし25度です。1923年の年度代表新月かつ金環日食はうお25度で起きました。

 うお25度の金環日食 * 恒星アルゴルおうし25度

 

 ただ、恒星と天体とのアスペクトをとるのは賛成しない占星術師もいるかもしれません。一般論としてはそうあるべきなのですけれど、アルゴルと同じ度数というのは別格です。メデューサの首(頭)であるアルゴルは、他の恒星とは比較にならない強烈な“目力”を持っているからです。

 

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