アラン・レオの流儀

 1946年の映画「アラスカ珍道中(road to utopia)」のオフィシャル予告編。

https://www.youtube.com/watch?v=2wmQqUfgFbQ

 

 このビデオクリップの45秒から50秒あたりにご注目、ドロシー・ラムーアがこう歌っています。ジュピター、ジュノ―、 you know?。

 You know?、ジュピターは木星、ユーノーとも称されることがあるジュノ―は小惑星のジュノ―です。こんなところにも占星術的影響がみてとれます。

 この予告編中にもある通り、ドロシー・ラムーアは劇中歌 “personality”を歌っています。こんな歌です。

(43) Personality (1945) - Dorothy Lamour - YouTube

 

 このpersonality、なかなか訳しにくいですけれど、個性とでも訳しておけばいいかもしれません。性格と訳すとちょっと違和感があります、個人的な感想ですが。

 

 ところで

 「アラン・レオの占星術-出生図判断の秘訣」なる邦題の書籍が2023年の1月に出版されるようです。日本のアマゾンの当該ページを見ても、原タイトルが見当たりません。これは「the key to your own nativity」を翻訳したものです。

 アラン・レオの著作で二つ挙げるなら、the Progressed Horoscope と How to Judge a Nativity でしょう。

 前者はいわゆるプログレスないしプレグレッションが流行るきっかけとなった歴史的な本です。今となっては相当な時代遅れ感があります。モダンなものは陳腐化も激しいことが多い。念のために記述しますと、いわゆるプログレスは、アラン・レオの発明ではありません。アラン・レオは商売上の理由から、この未来予測法をいわば自陣の公式としたのでした。アラン・レオは元々商人であり、ある意味生涯商人でした。今日の占星術界のビジネスメソッドは、モダン派であれ伝統派であれ、アラン・レオに拠るところが大きい。

 後者の How to Judge a Nativity。アレン・レオの著作で一つだけ読むなら、これです。アラン・レオの占星術ということなら、できればこれを翻訳して欲しかった。この本には、あの有名な character is destiny なる名言があります。そうはならないのが日本の限界なのでしょう。

 では、the key to your own nativity はどうでしょうか。残念ながらあまり使える本ではありません。占いの本なので、当たらない感があるのは、まあ許容できます。占いというのはそういうものなので。問題なのは、2節から4節までが、どうも言葉遊びになってしまっている感があり過ぎなことです。

 

 §2 individuality、§3 personality、§4 mentality

 

 アラン・レオは、太陽のサインが individuality を、月のサインとハウスがpersonality を、まずは水星のハウスが mentalityを、象徴するとしています。もう何が何だかわかりません。

 今回の邦訳では、individuality を個性、personality を性格、mentality を精神性と訳しているみたいです。一応それで ok です。しかし individuality と personality を 使い分けるのは日本語ではほぼ無理で、英語でも困難です。

 

 goo 辞書によれば次のようになっています。

 Individuality  個性、特性、人格

 Personality   人の性格,人柄,人格,個性

 Mentality    精神(活動),心性;知能,知力;知性

 

 モダン派であれ、伝統派であれ、太陽は、個性よりもむしろパブリックな立場を象徴します。月は性格に影響しますけれど、personality と言われれば、月よりもアセンダントが気になります。

 伝統的には、 intellect(知性、知力)は、太陽が象徴します。これは Valens以来の伝統です。精神、知能、知力、知性は太陽と水星の関連です。では太陽と水星の intellectはどう違うのでしょうか。

 水星の方は小賢しさがあります。商人の知恵です。実用的とも言えます。水星は泥棒をも象徴します。いわゆる魔術も水星の関連です。詭弁術も水星が象徴します。手練手管的な知性です。試験に強いのは水星が強力な人です。太陽の方は、“地の塩、世の光”のその光からくる知性です。

 太陽と水星は28度以上離れませんから意味が似ているの部分があるのは当然です。“ライオン”の威(太陽)を借る狐(水星)なのかもしれません。

 トラを象徴する天体は定かではありません。リリーは火星か木星としているようですが根拠は不明です。しかし同じネコ科の猛獣ライオンは太陽が象徴します。百獣の王ライオンを象徴するのは当然太陽です。単に草食獣を狩る猛獣と言う観点にたてばライオンは火星が象徴します。そして当然にずる賢さの象徴であるキツネは水星が象徴します。この世は占星術で満ちています。

 それにしても商人のアラン・レオ。レオはしし座もしくはししサインを意味する言葉です。なるほど、ししサインのルーラの太陽を individuality と意味不明に海王星的に定義しなおすとは、なかなかやるな、と感嘆します。

 

 ここ10年では最も多難な年であったと思える2022年も何とか一年過ぎようとしています、良いお年を。

end