三人のロバート

☆伝統的占星術の巨星

 本ブログに頻出する歴史家のジェイムズ・H・ホールデン。最古のハウス分割方式いわゆるサイン-ハウス方式は、彼の功績です。ホールデンは、これ以外のハウス分割方式は根拠がないという趣旨の指摘をしていたと記憶します。確かにハウス分割方式は何十とあります。どれも相応の根拠はあるはずですが、本当はどれも根拠がないとも言えます。スター(占星術師)が使っているものはマスクにいたるまで売れるわけです。

 サイン-ハウス方式は、占星術の原理そのものを根拠としているので、これが使えないということになると占星術はインチキであることになってしまいます。

 ホールデン以外の20世紀(&21世紀の最初の15年間)の伝統的占星術の巨星は三人または四人です。この四人は、初版1996年のホールデンの歴史書に登場します。他にも登場する人がいるのかもしれませんけれど当方が気づいたのはこの四人です

 ディミトラ・ジョージ女史や Lehman 女史もその歴史書に登場しますけれど、彼女らは“小惑星のお友達たち”で一括りにされています。ただ Lehman 女史はルーラーシップブックを出版したと一言述べられています。

 

 四巨星

 オリヴィア・バークレイ1919-2001

 ロバート・ハンド 1942-

 ロバート・ゾラー 1947-2020

 ロバート・シュミット 1950-2018

 

 ホラリー復興の功績はもちろんバークレイ女史です。一方で誤解も生んだようです。へルメス起源の正統的占星術の王道はネイタルだからです。

 5人目を挙げるとすれば、当店的にはデイミトラ・ジョージ女史です。四天王ということで、バークレイ女史を降ろしてデイミトラ・ジョージ女史を入れてもいいくらいです、正統占星術的には。

 しかしながら3は大吉星の木星の数で命数「三」というのは縁起が良いですから本日のお題は三人のロバートです。

 

☆御大ハンド

 ハンドについては皆さんご存じの通り。そのトランジット本は、もはやモダンの古典です。トランジット本の最高峰です。1980年代前半までのハンドは、心理占星術寄りな本(Horoscope symbols)を書いたりしていました。その後伝統的占星術に転向しました。業界の最長老的存在です。

 ハンドについては後日また取り上げるかもしれません。

 

☆ゾラー

 500年に一人の占星術師、ダイクス博士の師匠がゾラーです。これがゾラーの最大の功績です。

 伝統的占星術のいわゆるパイオニア的存在がゾラーです。ダイクス博士がボナッティを英語に全訳するまでは、ゾラーのテクニックが業界標準でした。

 ゾラーの誕生図は、ASCうお、かにサインが第5ハウスで、n月はうおです。昼チャートなのがやや珍しい。火星、太陽&水星がみずがめ12thで、木星さそり9thでリセプションです。土星Rししと太陽みずがめはミュウチャルディスポジションです。魔法使いなのかもしれません。

 日本でもゾラーのテクニックを学んだ人は結構いるようです。彼女ら彼らには発信力が無きに等しいので実態は不明ですが。もっとも今となっては、それはそれで問題です。ゾラーのネタ元は、大きく言えばボナッティです。ところがゾラーの弟子のダイクス博士がボナッティを2年間という短期間で?英語に全訳してしまいました。その結果わかったことは、ボナッティに始まる欧州の占星術は中世イスラム占星術、特にサールがネタ元である、これです。なおサールのネタ元の多くはマシャアラーです。マシャアラーの著作は残っているものが少ないのが残念です。ゆえにサールの影響力は致命的に重要なものとなります。

 

☆シュミット

 3人の最後、いわゆるトリは最も貢献が大きかったのに志半ばで倒れたシュミットです。シュミット抜きに伝統的占星術は語れません。シュミットの弟子系にあたるのが、ジョウゼフ・クレイン、故アラン・ホワイト、デイミトラ・ジョージ女史、クリス・ブレナン、オースティン・コポックなどです。バーナデット・ブラディ(ブレイディ?)女史もシュミット系です。女史は、プロジェクトハインドサイトで売っている全ての書籍を購入したとのこと。本人談。

 シュミットによれば、西洋占星術すなわちThema mundiの発明者は、紀元前4世紀のエウドクソスだとのこと。もっとも、これはシュミットだけ?の説であり、一般に認められているわけではありません。エウドクソスが西洋占星術の発明者だとすると、その後の約200~250年間の空白期間の説明が困難になります。あるいはバークレイさんがリリーのCAを再発見したみたいに、紀元前2世紀にヘルメスによってThema mundiが再発見されたのか。今となっては真実は迷宮入りです。

 

☆シュミットの誕生図

 Rodden rating AAです。67歳で他界しました。Ages of man の木星時代の最後の年です。67歳のサインはうおであり、n木星はうお3度です。これは第8ハウスです。もちろんししサイン生まれの人が55歳や67歳で死去するとは限りません。シュミットの場合、うおを1番目のサインとすると、8番目のサインであるてんびんに大凶性の土星が来ます。しかも最悪の天体のn土星□アプライのn太陽やぎ in 病気の第6ハウス。これだけで予測は無理ですけれど、67歳は困難な時期であるとは言えます。念のために申し添えますど、伝統的占星術においては、○○サイン生まれと言った場合、ASCサインのことを意味します。シュミットのASCはししサインです。実はバンディと一緒です。しかしバンディの場合、さそり(←呪われたサイン)といて(←事件事故のサイン)強調なのに対し、シュミットは伝統のサインであるやぎ強調です。

 シュミットの木星(死神)はうお3度ですから、てんびん26度-おひつじ26度のラインも死期的には危険ラインです。ASCしし17度を67度進めるとてんびん24度となります。

 死神のn木星を一度一年法で67度進めると、おうし10度となります。nMCはおうし8度です。

 生まれ時刻が5~10分ほどずれている可能性があります。しかし、ししサイン生まれ、すなわちnASCししであることは確実です。

 

☆ロッツとバンディ

 シュミットのロットオブデス(death)はふたごです。

 2017年のソーラーリターンのASCはさそりです。当然その第8ハウスはふたごとなります。水星Rは、いて13度です。木星、水星&金星が火星さそりと土星やぎに挟まれています。土星合太陽でもあります。誕生図では土星□太陽、土星が太陽をオーヴァーカミング、でした。誕生図の約束を引き出すのがリターンやトランジットです。

 

 ところで、テッド・バンディのICルーラは火星(殺し屋)で、いて13度にあります。

  シュミットの2017年ソーラーリターンの水星Rいて13度

  偶然?

  これぞ正統占星術の秘伝中の秘伝?

 

 水星いては、いわゆるデトリメント。当店はデトリメントの扱いには慎重です。しかしながらドミサイルの反対側、最遠という幾何学的事実は重い、と言えます。

 

 ソーラーリターンで一番重要なのは誕生図同様ASCです。2017年シュミットのソーラーリターン。ASCさそり0度、火星さそり8度。

 死去時のトランジットのt火星はうお13度。誕生図の第8ハウスにインです。

 nICさそり8度 合 ソーラーリターンの火星さそり8度

 ソーラーリターンの水星Rいて13度□t火星うお13度

 

 シュミットの2017年ソーラーリターンのようにnであれリターンであれアングルのルーラがアングルに合となるときは重要な年です。アングルは出しゃばるからです。どの程度重大なことになるかは事前にはなかなか分かりません。ただしクライアントから質問されたならある程度わかります。生命の危険がありますかと問われれば、平均的な年よりはあります。相当に危ない年、10年一度程度の危ない年とは言えます。

 

 シュミットの誕生図

https://www.astro.com/cgi/chart.cgi?wgid=wgeJwtTs0KwjAMfhpBIUKarYNZehNk4Mkhnru12DFbZa2M-fRmKOTwJd9f5mEcNKl70EaoaHXb-zDYDJdn56YMAYhA8NQSgfDAm69muJsEyJp-3BA26WGihebMeHttd1DjXEgoRSwEvEEUsoI9yRIRUBnbRROc_uWz41-4EtZkp4n4eHS9CyxguDarLi8v_jJkr038KJ8WLUhNSYvb6QvGQzn6

 

  今日のホラリー占星術ブームは確かにこの本から始まりました。ただ当ブログ的には、すでに歴史的使命を終えたという立場です。読みにくいことでは悪名高い本です。しかし有識者なら記録として持っておく価値はあります。ロバートハンドが序文を書いています。

 よくよく読めば、ところどころハッとするような記述はあります。しかし労のわりには報われません。占星術というのはコストも大切です。有用な情報を得るのに手間がかかりすぎる本です。

Horary Astrology Rediscovered: A Study in Classical Astrology

Horary Astrology Rediscovered: A Study in Classical Astrology

  • 作者:Barclay, Olivia
  • 発売日: 1997/03/01
  • メディア: ペーパーバック
 

 

 end